「なぜ」を5回繰り返せばいい?

根本からの品質改善のために、「なぜなぜ分析」を採用している日本企業はトヨタグループ以外にもあるのでしょうか?

皆川氏:トヨタグループ以外の企業でも使っているところはあります。しかし残念ながら、ほとんどが直接原因の対症療法で終わってしまっているというのが実態です。「なぜなぜ分析とは、なぜ?を5回繰り返すことだ」という誤解が広まっていることが、その理由の1つでしょう。

え、誤解なのですか? 実は私もこれまで、「なぜなぜ分析」とは、なぜ?を繰り返すことで、大元の原因を追及することだと思っていました。なぜ?を少なくとも5回くらい繰り返せば、真因にたどり着けると理解していたのです。ある原因Aを生んだ原因Bを突き止め、さらに原因Bを発生させた原因Cを見つけ出す…といった具合に。

皆川氏:ああ、あなたも誤解している1人なのですね。ある製品で錆(さび)が発生する不具合が起きたとします。そこで、「QC七つ道具」の1つである「系統図法」を使い、原因を展開していきます。

「ボルトが折れた」→「ボルト径が小さかった」→「図面の読み取りを間違えた」→…

         →「メンテナンス不良だった」→…

         →「ボルトの材料が不均一だった」→…

といった具合です。ところが、なぜなぜを繰り返してこうした展開を続けても、どこまでいっても直接原因でしかありません。よくあるのが、こうした展開を5回ほど繰り返していき、直接原因を「真因だ」と思い込むことです(注:誤解しないでもらいたいのですが、系統図を展開して直接原因を考えていくことも必要です)。

 そうではなく、真因は「錆が発生した製品を市場に出してしまったのは、なぜか?」というところに隠れています。製品に錆があることを市場に出す前に社内で発見できる仕組みがなかったことが、この不具合の真因なのです。

 何度も言いますが、真因とは仕組みの原因です。「なぜなぜ分析」は、仕組みに落とし込んでそれを改善し、不具合やトラブルを未然防止するための活動なのです。再発防止ではなく、未然防止につなげることが目的です。決して、「なぜ?なぜ?」と念仏のように繰り返すことではありません。