ワールドテック講師 元デンソー 愛知工業大学工学部機械学科非常勤講師の皆川一二氏
ワールドテック講師 元デンソー 愛知工業大学工学部機械学科非常勤講師の皆川一二氏
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 大手企業の中で優秀だと言われる技術者が習得している品質手法を網羅し、高い水準の「品質力」を身に付ける──。こうしたコンセプトで「技術者塾」が立ち上げたのが、連続講座「品質完璧マスターシリーズ」である。講師を務めるのは、デンソーの開発設計者出身で「品質リーダー」も経験した皆川一二氏。その中に「品質データ整理の基本「QC七つ道具と新QC七つ道具」」という講座がある。技術者として必須の手法のはずが、意外にも「使われていないことが多い」と同氏は指摘する。これに対し、トヨタ自動車グループでは技術者にかからず頻繁に使われるという。その理由は何か。(聞き手は近岡 裕)

──好評の「品質完璧マスターシリーズ」。第2回の講座の講座で取り上げるテーマは「QC七つ道具と新QC七つ道具」です。なぜこれらを学ぶ必要があるかを教えてください。

皆川氏:まず、初心者の方にも分かるように説明すると、QC七つ道具とは[1]パレート図、[2]特性要因図、[3]グラフ、[4]チェックリスト、[5]ヒストグラム、[6]散布図、[7]管理図──のことです。一方、新QC七つ道具とは[1]親和図法、[2]連関図法、[3]系統図法、[4]マトリックス図法、[5]マトリックスデータ解析法、[6]アローダイヤグラム、[7]PDPC法──となります。

 個々の詳細は講座に譲りますが、これらは品質関連の参考書に書かれていることでもあります。上司や先輩から読んで勉強するように言われた人もいるでしょう。しかし、意外にも大切なことが忘れられていることが多いのです。それは、「何のためにこれらの道具を学ぶのか?」について、しっかりと押さえていないこと。これでは各道具の中身を知っていても、ものづくりの現場で実際に使われる機会は少なくなってしまいます。

 QC七つ道具と新QC七つ道具は、品質データ整理の基本です。これらを学ぶ理由は、「見える化」するためです。品質を高めよう、あるいは品質トラブルを未然に防ごうと思っても、まずは品質データを見える化しなければ、問題の解決や改善どころか、問題が何かを知ることすらできません。

 例えば、不具合件数が昨年は5件で今年は10件だという場合、棒グラフで示せば高さの差で品質が悪化していることが一目瞭然ですよね? 冗談で私は、「問題に気づかれたくなければ、数字で書いておけばいい」と言っています。円グラフを世界に広めた人は、英国の看護師であるナイチンゲールだと言われています。クリミア戦争で亡くなる兵士について、敵の攻撃を受けて直接死亡する人よりも、負傷して病棟で亡くなる人が多いことを円グラフで見える化し、看護師の派遣を要請することに成功したのです。

 QC七つ道具では、数値を扱います。数値データから事実を客観的に、しかも手軽につかむための道具なのです。一方、新QC七つ道具が扱うのは、言語データ。言語データを整理し、これからどうするかという課題や問題に対して解決策を考え、発想して創造するための道具です。品質を改善する際に頭の中で考えていることを見える化するために使います。例えば、「職場を明るくしたい」という課題に対し、職場を暗くしている原因だと思うものを職場全員に付箋紙に書いてもらう。これらを集めて内容によってグルーピングし、何が問題かを考えるといった場合に使うのが新QC七つ道具の1つである親和図法なのです。