──トヨタグループではQC七つ道具と新QC七つ道具をしっかり学ぶのですか。

皆川氏:もちろんです。トヨタグループでは統計的品質管理(SQC)の中に、QC七つ道具と新QC七つ道具を加えているほどです。統計手法を使っているわけではないので、本来はQC七つ道具と新QC七つ道具がSQCに含まれることはないはずです。これは他社ではほとんどみられないトヨタグループの特徴です。

 トヨタグループがQC七つ道具と新QC七つ道具を習得するのは、「みんなに分かってもらうため」です。見えない問題は議論できないし、見えない品質は改善できません。設計現場でも生産現場でも大量のデータや資料が生じますが、生のデータや資料を集めただけではみんなで何が問題かを話し合うことはできません。そこで、QC七つ道具と新QC七つ道具を使って見える化します。これにより、議論ができるようにしたり、誰かを説得したり納得させたりすることが容易になるのです。

 例えば、東日本大震災で生じた福島第一原子力発電所事故の除染の行程表。世間に公表された行程表は1つの行程しかありませんでした。「A」→「B」→「C」…といったものです。これでは何か条件が変わって、例えば反対する人が出た途端に進まなくなってしまいます。こうした場合、新QC七つ道具の中のPDPC(過程決定計画図)法を使います。事前に考えられる結果を予測して手段を考える、リスクマネージメントのための道具です。

 トラブルが発生した際によくあるのが、何も考えずにいきなり原因を調べることです。こういうときこそ「急がば回れ」。思いつきで行動すると、時間がかかる割に良い結果が得られません。最初はQC七つ道具と新QC七つ道具を使うことが面倒に感じるかもしれません。しかし、結局はより良い結果がより短時間で得られるのです。