全員が学ぶ理由

──それはなぜですか。

皆川氏:例えば、技術者が1000人いる企業で、合格水準を超える技術者が10人いる程度では品質の良い製品が造れないからです。確かに、この10人に入る優秀な技術者が設計した製品の品質は良いでしょう。しかし、それはたまたま。他の技術者が設計した製品の品質はいまひとつということになってしまいます。個人差が大きいと、当然、品質はばらついてしまいます。

 トヨタグループの場合は、誰が設計しても高い品質を維持するために、技術者全員が必須の品質手法を学ぶのです。こうすれば、安定して、持続的に、高い品質を満たすことができます。

 まとめると、トヨタグループでは品質手法を業務の必要に応じて学びます。しかも、全員が体系的に学ぶことで、それぞれの品質手法の位置づけを把握します。これにより、17の品質手法の全てがそろって、初めて「お客様満足」という品質を満たせることを理解することができるというわけです。

 最後に、品質手法を学ぶ人に向けて私が贈りたい言葉があります。それは「品質は嘘をつかない」という言葉。変なデータが1つでも出たら、それは品質上の異変を示しています。誤差や何かの間違いなどと勝手に判断して見逃すようなことがあってはいけません。トヨタグループではそのことを徹底してたたき込まれます。だからこそ、技術者は皆、やるべきことを1つひとつ愚直に実行するのです。「技術者塾」の講座「品質完璧マスターシリーズ」は、品質を扱う上で最も大切とも言えるこうした「品質マインド」を備えた技術者の育成も目指しています。