一部の品質手法では不十分

──部分的な品質手法では、なぜダメなのですか?

皆川氏:実践しなければならない最低限の品質手法が抜けてしまうからです。品質手法は必須のものが有機的に連携しながら効果を発揮します。1つの品質手法だけでは十分に機能するとは言えません。

 なぜ1つの品質手法を学んで満足してしまうかと言えば、それぞれの品質手法について学ばなければならない理由を知らないからです。つまり、全体の中における個々の品質手法の位置付けが分からないため、他の品質手法の重要性に気付かない。

 例えば、「FMEA」であれば単に管理項目にあるからやっているだけ、という日本企業が少なくありません。しかし、「FMEA」の本来の目的は、どうすれば不具合を出さない設計になるか、あるいは不具合を防ぐためにどのような評価をすべきかについて、みんなで議論することにあります。ところが、そこまで考えが至らない。そのため、「FMEA」では単に点を付けて管理をどうすればよいかで終わらせてしまうのです。

 不具合を出さない設計を考えるという観点に立てば、「品質機能展開(QFD)」や「なぜなぜ分析」、「QCストーリー」「統計的品質管理(SQC)」といった他の品質手法も学んで実践しなければならないということに気付くことでしょう。

 実際、「FMEA」だけでは抜け(穴)だらけになってしまう。例えば、製品に不具合が発生して分析するには、「なぜなぜ分析」が必要です。これを使わずに対策を講じると、仕組みの(根本的な)改善になりません。すると、表層的で局所的な改善しかできず、今後も別の製品や異なる工程で似たような不具合を起こす可能性があります。