──工場マネジメントの基本を習得する利点を教えてください。

古谷氏:本講座「工場マネジメントの基本」では、先ほど申し上げたように、工場をマネジメントする立場の管理者が落とし穴にはまらないように、工場の基本的なあり方を、[1]ものづくり、[2]品質造り込み、そして[3]「見える化」という3現主義の観点から、具体的にどうすべきかを解説する内容になっています。

 実は、この講座で解説する内容は、過去にどの工場でも理解され実行されるべき「当たり前のこと」と言われていました。恐らく、ある年齢以上の人にとっては、今でもそのような認識にあると思います。しかし実際のものづくりの現場では、この「当たり前のこと」が、「当たり前にできなくなっている」という現実があります。

 「当たり前のことを当たり前に実行するためには、何を理解し、どうすればよいのか」を先輩から若手に適切に教育できていないと、いつの間にか「わが社は、当たり前のことができなくなっている」という状態になってしまいます。

 しかも厄介なことにこの問題の特徴は、当たり前のことができていなくても、日常の業務は成り行きで進んでいくことです。何か大きなトラブルに見舞われるなどのきっかけがないと、管理者ですら問題の存在に気付かないため、ものづくり力の低下に気付いた時には、回復が困難なほどにダメージを受けていることも珍しくはありません。

 本講座では、ものづくりの現場がそのような状況に陥らないように、必要な知識とやるべきことの進め方を確実に理解していただくことを狙いとしています。

──工場マネジメントの基本は、今後もますます必要とされるようになるのでしょうか。また、その場合は理由を教えてください。

古谷氏:ものづくり力が低下する原因の1つが、ものづくりの基本や品質造り込みの基本などが適切に次世代人材に教育されていなかったことだと述べました。その基本の伝授の担い手となるベテランが退職していく中で、企業の中に工場を上手くマネジメントできる知識そのものがなくなりつつあり、気が付けば教える人材がいないという致命的な状況になりかねません。

 そのため、ベテランのノウハウがまだ残っていて、過去に工場を大きく育てた先輩たちがまだいる、まさに今こそ工場マネジメントの基本を学ぶ最後のチャンスといえます。

──本講座において、どのようなポイントに力点を置く予定ですか。また、そのポイントに力点を置く理由についても教えてください。

古谷氏:本講座では、いわゆる管理技術や管理手法の話をするのではなく、工場のものづくり力を強靭にするために、マネジメントを担う管理者が知っておくべき事柄の解説に力点を置きます。講座で話すポイントは、主に以下の3つです。

[1]ものづくりのあるべき姿を正しく理解する。
 工場をマネジメントするためにはまず、ものづくりのあるべき姿を正しく理解し、どんな現場を作らなければならないのかという明確なビジョンを持つことが必要です。また、そのような現場を作り上げるための具体的な実践方法の理解、そしてそのような現場を作り上げることの経営的な意味を併せて理解することが重要です。

[2]生産現場で品質を作り込む考え方を正しく理解する。
 ものづくりの主戦場である工場において、品質を確保するためには何をしなければならないのかという品質造り込みの考え方は、工場マネジメントには必要不可欠です。品質というと技術的なスキルがないとマネジメントすらできないように誤解する方もいますが、多くの品質問題は品質造り込みの考え方を理解した上で、論理的な検証ができていれば解決できます。

[3]徹底した見える化と3現主義の必要性を正しく理解する。
 工場マネジメントの基本は、現場の見える化です。ものづくりや品質、あるいは経営の管理すべき事項を徹底して見える化することが重要です。見える化によって事実を正しく把握できれば、適切な対応を延滞なく取ることができます。マネジメントが自身で確認できる事柄には物理的な限界があります。そのために、あらゆることが「見て分かる」工場でなければ、管理はできないと言っても過言ではありません。

──本講座の受講者対象者はどのような人ですか。

古谷氏:本講座の内容は、製造部長や工場長といった工場管理者はもちろん、ものづくりに携わる全ての人が理解すべき内容を盛り込んでいます。そのため、次の方々を特に想定しています。

 まず、工場管理の基本を体系的に網羅した内容ですので、将来、自社の生産現場や工場の中核を担ってほしいと期待されている若手・中堅社員の方に参加していただきたいと思います。

 また、社内で体系立った教育を受けないままに、経験の積み重ねで上位の役職に就かれた方も少なくありません。自社の生産現場や工場のどこに課題があるのかを改めて見直し、ものづくり力の強化をさらに推進できる実力を持った管理者・監督者の方にもぜひ参加していただきたいと思います。

──本講座を受講することで、どのようなスキルを身に付けることができるのでしょうか。

古谷氏:まず、当たり前のことを当たり前にできる現場を作るための基本を正しく理解し、強い現場を実現するための実践方法を学ぶことができます。続いて、当たり前のことがなぜ当たり前にできないのか、その難しさを理解して正しく取り組む方策を知ることができます。次に、工場管理者として、経営的視点を踏まえたものづくりの考え方、現場の指導の仕方を理解することができます。そして、工場管理者として、QCDを確保するために何を管理しなければならないのかという、管理技術のポイントを知ることができます。