本間技術士事務所の本間 精一氏
本間技術士事務所の本間 精一氏
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 プラスチック製品のトラブルが減らない。設計者が自らプラスチック製品を設計することが当たり前になった今、トラブル回避に苦心する設計者は増えている。「技術者塾」で「課題解決に導く プラスチック製品の強度設計&トラブル防止策」〔2017年3月10日(金)〕の講座を持つ本間技術士事務所の本間精一氏に、プラスチック製品の設計で腕を上げる方法を聞いた。(聞き手は近岡 裕)

──最近、自動車業界を中心にプラスチックの採用熱が増しているようです。

本間氏:自動車業界を中心に、軽量化ニーズが以前に増して高まっています。それに伴い、軽量化材料としてプラスチックに再び注目が集まっているのです。ただし、単に金属をプラスチックに置き換えることはやり尽くした感があります。そこで、最近はより軽くするために、緻密に計算して薄肉化設計が盛んです。

 ところが、薄肉化すると課題が増えます。例えば、射出成形時に溶融プラスチックの流動性を高めるために、高温で成形する必要があります。すると、プラスチックの熱分解が起きやすくなります。プラスチックが熱分解すると変色したり、銀条(シルバーストリーク)と呼ぶ銀白色の条痕が発生したり、強度が低下して割れトラブルにつながったりします。

 加えて、薄肉化するとウエルドラインの溶着面の溶着が悪くなるので強度低下が起きやすい。高い射出圧力を加えるため、反りが発生しやすくなる。金型の流路が薄いため溶融プラスチックが早く固化して未充填(ショートショット)が起きやすい。肉厚が薄いため荷重変形が起きやすく、外部から力が加わると変形によって内側に収めた部品などに力を加えてしまう恐れもあります。このように、薄肉化すると不良現象が強調されてしまうのです。

 高温環境下で使うため、これまで金属製しか使えなかった部品を、耐熱性を高めたプラスチック製部品で置き換えて軽量化する動きも見られます。150~350℃で使う熱可塑性プラスチック製部品が出てきているのです。こうした耐熱性の高いプラスチックは成形条件が過酷になります。高い温度で成形するため、先に挙げた熱分解などの成形上の問題が出やすくなるからです。