トラブルと基本をリンクさせる

──プラスチックの強度設計を習得する際のポイントを教えてください。

本間氏:製品設計において、ウエルドラインやコーナーR、成形時の残留ひずみなどの影響について理解し、適切な設計を行うことが大切です。

 ウエルドラインは強度のウイークポイント。左右から来た溶融樹脂が合流し、溶着する箇所に発生する成形現象です。ウエルドラインがある部分は、それがない部分と比べて強度が落ちてしまいます。外観品質も劣ります。でも、穴がある製品形状や、極端な肉厚の差がある製品形状、複数のゲートがある場合は、ウエルドラインの発生は避けられません。この場合は、ウエルドラインが生じることを前提に設計を工夫します。例えば、強度や外観品質をそれほど要しない箇所にウエルドラインが発生するように設計するのです。ウエルドラインをなくす方法もあります。ゲートを1箇所にする、穴をなくす、肉厚差を減らす、といった設計変更を施せばよいのです。

 プラスチックの強度設計を習得するには、材料選定と成形品の設計、そして成形の基本をまず押さえる必要があります。その上で、成形現象や不具合にどのようなものがあるかを押さえる。続いて、不具合やトラブルをどのように解決したらよいかを学んでいくのです。

 気をつけなければならないのは、不具合の解決策やトラブル防止策を学んでも、基本を押さえていないと不具合・トラブルと解決策・対策がリンクしません。すると、応用が利かず、少し条件が変わると解決策や対策を見つけることができないのです。そのため、プラスチック製品の設計では「原理・原則」を押さえなければなりません。

 不具合の解決策やトラブル対策を学ぶ際には、「Why(なぜ)?」と考えることがとても大切です。というのは、プラスチック製品は材料も形状も成形条件も千差万別であるため、こうしたら必ず解決するというものはないからです。しかし、原理・原則が分かっていれば、その場その場の対応がより適切なものとなり、不具合の解決策やトラブル対策がより早くできるようになるのです。