一般の設計者でも必須の時代に

──プラスチック製品でトラブルになるケースが増えていると聞きます。何が起きているのでしょうか。

本間氏:設計者にとって、プラスチック製部品や製品を設計することが当たり前になったということが大きいと思います。

 以前は社内にプラスチックに詳しい専門家がいることが多かった。その人に、例えば「コスト削減のために、この金属製部品をプラスチックで置き換えたいのですが」と相談すると、必要な知識やヒントを教えてくれました。

 ところが、時代の変化もあってそうした専門家がいる企業は減っている。今では専門家に頼るのではなく、一般の設計者が、鋼やアルミニウム合金などと同じようにプラスチックを素材の1つとして捉え、自ら判断して使いこなす必要に迫られています。例えば、従来よりも軽量化するために、製品のどの箇所に、どのような種類のプラスチックを、どのように成形して使うかを、設計者が自ら決めなくてはなりません。

 社内にプラスチックの専門家がいないとなると、先輩の設計者やベテランに教わろうと考えることでしょう。ところが、今の設計者は多忙を極めているため、教わる時間や機会をなかなか得られないというのが現実です。一方、ベテランは退社してしまっている。すると、自ら勉強するしかないのですが、実践的な本が少ないことや、異なる技術を総合的に判断して使いこなさなければならないという難しさがあって、独学だけでマスターすることが難しいことは、以前のインタビュー「プラスチック製品でトラブル急増のなぜ」「なぜ「耐熱性」を満たせないのか?---プラスチック製品の設計には「原理・原則」がある」でも述べた通りです。

 こうした背景から、結果的に顧客や市場に出した後で問題やトラブルが発生してしまうということでしょう。