全体最適の視点がない

──なぜ、そうした状態になっているのでしょうか。

皆川氏:残念ながら、品質手法を全く学んでいないところが中小企業を中心に目立ちます。顧客である大手企業から指導された通りにやれば済んできたのかもしれません。しかし、指導されている内容の本質を理解せずに言われたことだけを実行して満足しているようでは、例えば自社ブランド製品を造る際など、大手企業の指導が得られなくなると痛い目を見ることになる可能性があります。

 一方、大手企業では品質手法を学んでいるところが珍しくありません。しかし、高い品質を満たすために必要な品質手法を網羅しているケースは少ないようです。教育機会があっても希望制で、受講した人と受講していない人とで大きな差がある場合もあります。実際、管理職(課長)でありながら「QC七つ道具」を知らない人に会って、私は驚いたことがあります。

 必要な品質手法を一通り学ぶ機会がある企業に対しても、私は懸念を抱いていることがあります。それは、「全体最適の視点」で学んでいる企業が少ないことです。つまり、各品質手法が全体の中でどのような位置づけにあり、優先順位はどうなっているかといったことを習得している人が今、めっきりと減っているのです。

 設計者はものづくりの「司令塔」です。部分的に知っているだけでは、優れた司令塔にはなれません。各品質手法の本質を理解することはもちろん、全体最適の視点で品質手法を捉えておかなければ、関連部署に的確な指示を出すことができません。