テクノサポートオーテス代表、ワールドテック講師(元デンソー)、愛知工科大学 工学部 非常勤講師 岡本邦夫氏
テクノサポートオーテス代表、ワールドテック講師(元デンソー)、愛知工科大学 工学部 非常勤講師 岡本邦夫氏
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 表面処理のニーズが高まっている。性能や品質を一層高めるべく、ギリギリを突いた「限界設計」が求められていることが、その背景にはある。「技術者塾」において「失敗しない設計」講座を持つ岡本邦夫氏(テクノサポートオーテス代表、ワールドテック講師、愛知工科大学 工学部 非常勤講師)に、表面処理技術のトレンドや、気をつけるべきトラブルなどを聞いた。(聞き手は近岡 裕)

──最近、注目されている表面処理技術を教えてください。

岡本氏:最近、レーザーを使う表面処理が注目されています。例えば、潤滑性を高めるための表面処理。これまではショットピーニングを使い、いろいろなビーズを部材(ワーク)にぶつけて凹凸状のディンプルコートを作製。こうして「油だまり」を作り、潤滑性を向上させていました。このディンプルコートの加工をレーザーで行うのです。

 レーザーを使って部材の狙った箇所に、狙ったパターンの凸凹を作る。こうしたパターンを入れた状態で摺動させると、摺動部に動圧が発生して部材が浮き上がり、隙間が出来る。そこに油が入って潤滑性が良くなるのです。この技術は今、低燃費開発を加速している自動車のエンジン分野で注目されています。実用化はこれからですが、現在ホットな技術です。

 レーザーを使った焼き入れも新技術として注目されています。これまでは炉を使って部材全体を加熱して焼き入れするか、高周波を使って表面全体を加熱して焼き入れしていました。炉を使う場合は、炉全体を加熱するため大量のエネルギーを消費します。一方、高周波を使う場合は、表面を加熱するだけなので省エネの利点があると言われてきました。その分、深い部分には焼き入れができません。

 これに対し、レーザーを利用すれば部材の望む箇所に、望む深さだけ焼き入れができます。必要な部分だけに焼き入れするため、より少ないエネルギーで済むのです。この技術の研究も自動車分野がリードしています。