Google社のマネジメントを見ると、トヨタ自動車のマネジメントの神髄に気付いているように思える
Google社のマネジメントを見ると、トヨタ自動車のマネジメントの神髄に気付いているように思える
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豊田マネージメント研究所副社長の高木徹氏
豊田マネージメント研究所副社長の高木徹氏
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 米国を代表するグローバル企業であるGoogle社。そのマネジメントは、これまでの欧米企業とは一線を画している。従来型のMBA(経営学修士)を基にしたマネジメントに背を向け、日本企業のマネジメントを研究して取り入れているというのだ。その企業とはトヨタ自動車。同社の実践型マネジメントに学び、その方向に舵を切っている。世界の先端を行く企業のマネジメントで何が起きているのか。「技術者塾」において「欧米の一流企業を超える本物の管理力を身に付ける トヨタ流マネジメント講座」(2018年1月18日スタート)の講師の1人である豊田マネージメント研究所副社長の高木徹氏に聞いた。その後編。(聞き手は近岡 裕)

──Google社を含めて、海外企業はどのようにしてトヨタ流マネジメントを取り入れているのでしょうか。

高木氏:書籍を追っていくと、トヨタ流マネジメントの発展の大まかな歴史がつかめます。トヨタ自動車のマネジメントは、1973年に同社内(当時はトヨタ自動車工業)で編纂された『トヨタ式生産システム─トヨタ方式─』が起点です。これが基になり、1978年に『トヨタ生産方式』が出版されました。

 その後、米国の大学がトヨタ自動車のマネジメントについて研究し、1980年代にマサチューセッツ工科大学(MIT)がトヨタ生産方式(TPS)を研究して「リーン生産方式」と呼ぶようになりました。日本では2000年代に発行されてベストセラーになった『ザ・ゴール』で有名な制約理論も、欧米では1980年代に生まれています。2000年に入ると、本格的なグローバル時代を迎えたトヨタ自動車は、自社が大切にしている価値観「トヨタウェイ」を2001年に発表しました。これを踏まえて、マネジメントの書『The Toyota Way』が米国で発行され、以降、トヨタ流マネジメントはリーンとして有名になりました。

 リーンは現在、ソフトウエア業界では「アジャイル開発」として広まっています。アジャイル開発とは、手戻りを最小限に抑えるために短いフィードバックサイクルで設計と開発、テストを素早く繰り返して進めていく開発の手法です。1度ソフトウエアを作ることで課題をあぶり出し、後工程に引きずらずに改善していきます。これにより、QCDの全てが高まるのです。

 2011年には、米国シリコンバレー発の起業マネジメント書『The Lean Startup(リーンスタートアップ)』が発行されました。新事業を小さく生んでスタートし、芽が出そうになければ軌道修正して新たな新規事業を立ち上げる。これを繰り返すことで、起業の成功率を高めるのです。Google社もこのリーンスタートアップを実践しています。

 アジャイル開発やリーンスタートアップの考えは、トヨタ自動車の「朝の改善は夕方には陳腐化する」という考えと同じものです。計画を立てて動くものの、現地・現物で計画がうまくいかないと軌道修正する。そして、このサイクルを素早く回す。これにより、トヨタ自動車は変化に対応してきたのです。