先行開発プロセスを学べる

──開発設計プロセスを構築する際に、気をつけるべき点は何ですか。

寺倉氏:開発設計プロセスのうち、量産設計プロセスについては最近、その重要性に気付く日本企業が少しずつ増えています。ただ、経験がないため、各プロセスの詳細が決まっている企業は多くありません。ここで気をつけるべきは、プロセスを端折(はしょ)ってならないということです。プロセスはルールなので、省いてしまうと、その分、品質やコストを造り込む精度が下がってしまいます。生産ラインで工程を飛ばして良品が出来ますか? それと同じことが開発設計プロセスでも言えます。また、大切なプロセスを省かないためには、各プロセスの中身を設計者が理解しておく必要があります。

 もう1つ気をつけるべき点は、各プロセスで決められたことをきちんと実行することです。私が開発設計プロセスについて指導していると、よく「時間がないので、全てのプロセスはできません。どうしたらよいでしょうか」と聞かれます。これに対し、私は次のように返答します。

 「時間がなければ、端折(はしょ)るという選択になることでしょう。しかし、それを許せば、お客様に迷惑をかける確率が高まるということを全員で合意しなければなりません。それが前提条件となります。この条件を認めるのであれば、端折っても構いませんよ」と。

 この条件は飲めない。性能やコストの目標を満たし、かつ品質不具合を出してはならないということであれば、密度を濃くして全てのプロセスで決まったことをやり遂げなければなりません。やるかやらないか、それが大きな分かれ道となります。

──「技術者塾」の「寺倉の「設計力」実践講座」では何が学べるのでしょうか。

寺倉氏:「世界No.1製品」を生み出し、かつ生産するために必要な開発設計のプロセスを学ぶことができます。前半の先行開発プロセスも後半の量産設計プロセスも、必要十分なプロセスをそろえて体系化したものを提示し、各プロセスの内容やポイント、実践すべきことなどを詳細に解説していきます。

 中でも、先行開発プロセスについて学べる点は珍しいと思います。体系化された先行開発プロセスを用意している企業を、少なくとも私は見たことがありません。なぜなら、これは開発設計者の経験から、私の頭の中にあった先行開発に必要な作業を全てルール化してプロセスとして体系化したものだからです。世界一を目指すのですから、目標値は高くなります。それを満たすべく技術的な課題をクリアすることが先行開発の仕事です。そのために必要十分なプロセスを構築したと自負しています。

 講座では、技術的課題をクリアした事例を紹介します。そこから、普遍的な考え方に落とし込む方法を採ります。加えて、目標値の設定についても事例を紹介し、それを普遍的な考え方に落とし込んでいきます。