──接触する部材同士の表面に凸凹があり、それらが物理的に擦れるからではないでしょうか。

岡本氏:あなたもそうですね。大部分の人は「表面が凸凹しているから」と答えます。しかし、今は凝着説が主流となっています。微細に見れば、部材の表面は必ず凸凹しています。そのため、凸部同士が接触する。その接触面で結合力が発生し、それをせん断する力が摩擦力となります。つまり、「結合力(=せん断力)×接触面積=摩擦力」となるのです。

 従って、面積を小さくするか、結合力=せん断力を小さくするかが、摩擦力を小さくするためのポイントです。

 このことがよく分かるのが、スイッチやコネクタで見られるトラブルです。これらの接点には導電性を良くするために金めっきを施すことが多い。金めっきは酸化しないため、純粋な金が表面に露出しています。ところが、純粋な金同士が接すると、結合力が大きくなって摩擦が増大してしまう。すると、スイッチの操作やコネクタの抜き差しがしにくくなり、無理に動かすと端子が座屈してしまうことがあるのです。

──トライボロジーに関する本はたくさん出ています。それを読めば習得できるのではないでしょうか。

岡本氏:トライボロジーに関する本を読んで学ぼうとする姿勢は素晴らしいと思います。トライボロジーの重要性に気付いているわけですから。しかし、一般的な記述が多いので、本で学ぶには限界があるのも事実です。それをいかに実務と結び付けるか、どのような考え方で設計に生かしたらよいかを「技術者塾」の講座で解説したいと思います。