──トライボロジーに関する最近の応用事例を教えてください。

岡本氏:金型では、離型性がトライボロジーに関連する話です。最近は金型の表面にクロムめっきなどを施して離型性を高める動きが見られます。

 エンジンではカムとバルブリフターの摺動部に、従来は硬質クロムめっきを施していました。しかし、最近はダイヤモンドライクカーボン(DLC)をコーティングするようになりました。例えば、バルブリフター側の摺動部にDLCを被膜し、相手材との間の摩擦係数を小さくするのです。

 ただし、両部品の間にはエンジンオイルを介在させ、エンジンオイルとDLCとの間のなじみ性を良くしなければなりません。なじみ性が悪いと、擦れ合う際の摺動力で間に介在するエンジンオイルが切れて摩擦熱が発生してしまう。そのため、DLCの中でも最適な種類の材料を選定する必要があります。同じDLCでもいろいろな種類があり、また原子配列次第で性能が変わるからです。それを理解して使わないと、良いトライボロジー設計ができません。つまり、材料では正しいトライボロジーマテリアルの選定が必要なのです。