IoT化にも有利に作用

──モジュラーデザインに取り組むとさまざまな制約が生まれます。それに抵抗を感じる設計者は少なくないのではないでしょうか。

佐藤氏:私がある企業にモジュラーデザインを指導した際に、部品数に上限を設けました。設計者が自由に設計すると部品数が増えてしまいます。そこで、部品数を抑える部品数マネジメントがモジュラーデザインを進める際に必要なのです。

 その企業のある設計者がこう言いました。「最初は部品数の制約を守るために、設計に時間がかかって大変でした。好きなように図面を描く方が楽でした。でも、制約を課されると工夫するようになります。しばらくして部品モジュールのデータベースができると、好きなように図面を描くよりもずっと楽だと気付きました。データベースから選ぶだけで図面を描く必要がないからです」と。

 部品数に制限を設けて図面作成に制約を設けるとモジュラーデザインが進み、会社が変わってきます。この「部品数マネジメント」がモジュラーデザインの核となるからです。たとえ導入当初は大変だと感じても、長い目で見たときにどちらの方がメリットが大きいか。モジュラーデザインを導入する際には、こうした中・長期の視点も必要になります。

 中・長期的な視点と言えば、モジュラーデザインはIoT(Internet of Things)化を進める際にも有利に働くはずです。

──モジュラーデザインがIoTと相性が良いと?

佐藤氏:その通りです。部品モジュールのデータベースを作ることができれば、製品であるユニットモジュールを生み出すための部品モジュールの組み合わせはIoTの力でできるようになるからです。部品モジュールの最適な組み合わせは人工知能(AI)を使う。私はモジュラーデザインを進めた企業が最も早く設計を含めたIoT化を整えていくと考えています。逆に、部品モジュールのデータベースを持っていなければ、設計のIoT化は難しいのではないでしょうか。

 ただし、データベースを構築する際には人の経験を織り込むことが大切です。かつて、いすゞ自動車にはエンジン設計の「匠」がいました。エンジン設計に携わった人であれば、他社でも名前を知っているほどの有名な人。この人がいないと解決できない問題は多々ありました。どれくらいすごいかというと、エンジンのシリンダーヘッドを触っただけで、「止めろ。ジャーナルの5番ボルトが緩んでいる」と言う。そして、エンジンを分解して確かめるとその通りだった、という具合です。音を聞き、エンジンを触って振動の原因が分かる。こうした匠の経験を織り込んでIoT化しないと、IoT化は絵に描いた餅になると思います。

──最後に「日経 xTECHラーニング」の講座の特徴を教えてください。

佐藤氏:最大の特徴は「実績」です。私は、いすゞ自動車で当時100万点あった部品数(部品の総量)を30万点に絞り込むことに成功しました。しかも、以降10年以上(確認をした時点)の間、30万点の部品数を維持する仕組みを実現しました。私の講座では理想論は語りません。全て体験から得た成功に導く具体的なノウハウを語ります。

 モジュラーデザインで実績を出している企業はまだ少ないと思います。そういう意味では、私は部品数マネジメントを成功させた数少ないエンジニアだと自負しています。マネジメントの原則に新しいも古いもありません。部品数マネジメントの本質は時代に左右されません。現在、世界の大手自動車メーカーがモジュラーデザインを進めていますが、私の講座はそれを実行する上での基本になるはずです。

 講座では、部品数マネジメントとモジュラーデザインに成功した最新の事例も紹介します。最後にディスカッションの時間も設けます。みなさんの疑問や悩みに対するカウンセリングを行いたいと思います。私が困るようなテーマをぜひ持ってきてください。

 部品数を抑えてモジュラーデザインを成功に導きたいマネジメント層はもちろん、設計開発に携わる技術者や、調達部門の社員の方にぜひ、受講してほしいと思います。