VPM技術研究所 代表取締役 所長 佐藤 嘉彦 氏
VPM技術研究所 代表取締役 所長 佐藤 嘉彦 氏
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 複数の製品をまたいだ部品の共通化を進めるモジュラーデザイン(MD)。その導入を本格化する日本企業が増えてきた。部品の種類(部品数)を減らし、コスト削減やリードタイムの短縮を実現するためだ。ところが、うまく実践できずに悩む声が目立つ。いすゞ自動車時代にモジュラーデザインを実践し、100万点の部品を7割減らした実績を持つVPM技術研究所代表取締役所長の佐藤嘉彦氏。モジュラーデザインがうまくいかない理由と、自身が実践したシンプルで実践的な方法を聞いた。(聞き手は近岡 裕)

──モジュラーデザインの最近の動きをどう見ていますか。

佐藤氏:モジュラーデザインを本格的に導入しようとする日本企業が増えています。トヨタ自動車が「TNGA(Toyota New Global Architecture)」の採用車種を増やしたり、ホンダが2020年までにモジュラーデザインを導入すると発表したりといった話題も出てきました。

 自動車メーカーだけではありません。建設機械メーカーや農機メーカー、そして中小企業の加工メーカーなど、幅広い分野の製造業がモジュラーデザインの導入を始めています。増える一方の部品数に対して何らかの手を打たなければ、会社は回らないという危機感を本気で覚えているのでしょう。その一方で、気掛かりな点もあります。

──どのような点でしょうか。

佐藤氏:「モジュラーデザインがうまくいかない」という声が多い点です。「モジュラーデザインの考え方は分かるけれど、具体的にどのように進めたらよいのか分からない」「モジュラーデザインに着手したけれど、成果が出ない」という話をよく聞くのです。本などでモジュラーデザインの考え方を理解しても、実践面で「うまくいっていない」、あるいは「うまくいかない」という悩みを抱えている人が目立ちます。

 実際、私はよく「実践しやすいモジュラーデザインを教えてください」という相談を受けます。いすゞ自動車時代に私はモジュラーデザインを実践し、当時100万点あった部品数(部品の総量)を30万点に絞り込みました。この話を知る人から「一体、どのようにしてモジュラーデザインを実践したのですか」と聞かれるのです。実は、モジュラーデザインを導入した大手企業の中にも、必ずしもうまくいっていないところがあると聞きます。それほど実践面で苦労する日本企業が多いのです。