──部品数を抑えれば原価低減できることは製造業に従事する人にとって常識的な知識だと思います。それなのに、なぜ部品数は増えていくのでしょうか。

佐藤氏:「新しくしたい」「変えたい」というのが、設計者の心理としてあるのかもしれません。先の「勝負する部位」が分からないというのも、理由の1つでしょう。

 いすゞ自動車で部品数削減運動を展開していたときの話です。私は社長の特命を受けた原価技術推進部長として、開発本部長と一緒に設計部門に行ってシガーライターを例に部品数削減について議論をしました。シガーライターの種類はなんと24種類もあった。電圧には12Vと24Vがあるため、これに対応するために2種類あるのは理解できます。しかし、後はたばこと煙の絵が違うだけ。モデルチェンジのたびに、煙の向きが変わるなど異なる絵が描かれているのです。シガーライターの絵なんて、勝負する部位でないのは明白です。

 そこで、私は「定員制」を敷きました。部品ごとに種類数の上限を決めたのです。シガーライターの定員は2種類。もしも新しいものを1つ造るなら、既存のシガーライターを1つ廃止する。これにより、部品の種類の増加を抑えたのです。

 さらに、シガーライターを担当する設計者をなくしました。そもそも、設計者をおいておくからシガーライターの種類が増えるのです。設計する人間がいなくなれば、シガーライターの種類は増えようがありませんから。結果、シガーライターについては2つの部品番号だけが残った。この残す部品を決める際に、最適設計を施せばいいのです。そうすれば、後は長い期間にわたって定員を守ることができます。