──そのモジュラーデザインによる部品数マネジメントを、具体的にはどのように進めていくのですか。

佐藤氏:私がいすゞ自動車で実践した部品数を抑える設計手法を「モジュール設計(=モジュラーデザイン)」あるいは「設計のモジュール化」と呼んだのは、1996~97年頃です。「日経メカニカル(現日経ものづくり)」にも寄稿し、そう書いています。当時はモジュール設計という考えは斬新だったと思います。

 モジュール設計にたどり着く際に、私は「部品数を削減するには、どのようなテクニックがあるだろうか」と考えるところから入っていきました。そして、共通化とモジュール設計を考えたのです。私が言うモジュール設計とは、最適設計を施したベースモジュールに、レンジ設計を加えるというものです。

 例えば、スプーンを考えてみましょう。大中小のスプーンを必要とする場合、中スプーンを対象に最適な設計を行います。ここでは、スプーンに求められる機能をきちんと満たし、材料や外観、品質面などでもベストのものを設計する。これをベースモジュールとして、大と小のスプーンを設計するのです。共通化されたベースモジュールはそのままに、大と小で変わる部分の設計だけを行えばよい。そして、この大中小の幅を「レンジ」と呼ぶことにしました。ここで、例えば容量を50ml、100ml、150mlと、レンジに50飛びのルールを定めておけば、75mlのスプーンが設計されることはなくなります。

 こうして部品数を抑える際に、キーワードが出てきます。「勝負する部位」と「勝負しない部位」です。勝負する部位とは、顧客からお金をもらえるところ。勝負しない部位とはそれがもらえないところです。つまり、勝負する部位は新設計を行ってもよい。しかし、勝負しない部位には、既存の部品を選択して設計するということです。こうした「メリハリ設計」を行うことがポイントとなります。