アイデア 代表取締役社長 前古 護 氏
アイデア 代表取締役社長 前古 護 氏
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 売り上げを伸ばし利益を高める「売れる製品」をいかに造るか──。競合企業の増加と競争の質の変化を受け、この課題に頭を悩ませるマネージャーや技術者が増えている。これを解決する新たな手法として「QTT」の連携活用を勧めるのが、アイデア代表取締役社長の前古護氏だ。「技術者塾」で「QFD-TRIZ-タグチメソッド(QTT)の連携活用」(2016年10月21日)の講座を持つ同氏に、「QTT」の連携活用とは何か、そして利点は何かを聞いた。(聞き手は近岡 裕)

──まずは基本的な質問から。「QFD-TRIZ-タグチメソッド(QTT)」とは何でしょうか。

前古氏:売れる製品づくりのため、また「ダントツ」の製品や技術を開発するために、どのように仕事を進めたらよいかという悩みに応える手法です。

 具体的には、日本で創出された品質機能展開(QFD)と、タグチメソッド(品質工学)、そして日本式に(日本企業の技術者が使いやすいように)アレンジされたTRIZ(発明的問題解決理論)の全てを連携させる手法となっています。QFDで顧客の声を製品の機能に展開し、TRIZで従来の思考を超えた技術問題解決策をコンセプト化する。そして、タグチメソッドでばらつきを抑えた最適設計を行う──という仕組みです。

 製品開発のシーン別に効率良く手法を使い分けることが、「QTT」の連携活用のポイントです。「QTT」の連携活用を習得すれば、企業として圧倒的な武器を手にすることができると私たちは考えています。さらに言えば、個々の手法を徹底的にマスターすることよりも、「成果」を出すためにスピード感を重視します。そのために、「いいとこどり」をしながら手法を道具として使い切る。キーワードは、「短時間に」「徹底的に」「合理的に」手法を活用することです。

 「技術者塾」の講座では、前段のQFDと後段のタグチメソッド、そして核となるTRIZをどう使うのか、道具の威力と実践活用のノウハウを実施例も交えながら説明します。

──「QTT」の連携活用は、なぜ(どのような背景から)開発されたのでしょうか。

前古氏:間違いなく、日本企業の技術者は一生懸命に仕事をしています。ところが、「思ったほどの成果を出せなかった」「時間が足りなかった」「もっと違う手があったかもしれない」といった声が多いというのが現実です。こうした悩みを抱える開発者や設計者をはじめとする技術者の悩みの声に応えるために、「QTT」の連携活用は開発されました。

 「QTT」の連携活用では技術問題に取り組む前に、まずはどのような課題を達成すべきか、あるいはどのような問題をテーマとして解決すればよいかといった重点課題を明らかにします。「目指す技術の顧客は誰か」「市場にどのようなインパクトを与えるのか」といった具合です。

 そのために、「QTT」の連携活用ではまずQFDを使います。加えて、本講座では「シーズドリブンQD」という、顧客ニーズが見えていないケースでも自社が持つシーズから新事業探索を行える新たな方法論も紹介します。いずれにしても大切なのは、課題抽出時に「できそうな目標に落ち着かせてしまう」ことをやめ、挑戦的な目標を立てることから始めます。ここでは、成果に結びつく高い目標を掲げます。

 ただ、高い目標を掲げると「達成できるのだろうか…」と不安に思う技術者は多いと思います。実際、高い目標を満たす難しい課題や問題に対して解決策を絞り出すのは至難の業です。まだ誰も成し遂げていないことかもしれませんし、少なくとも自分自身は足を踏み入れたことのない領域かもしれません。

 そこで、あらゆる技術者の知恵や人類の英知をフル活用し、解決に向けたアイデアの発散・収束を行います。こうした解決アイデアの発想に活用するのが、TRIZです。これを使いこなせば、技術者にとって強力な武器となります。その結果、従来にない画期的な製品や技術の開発コンセプトを生み出せることでしょう。

 しかし、画期的なコンセプトを得るだけで終わりではありません。続いて、製品を市場に出したときにばらつきのない頑強な設計を短時間で実行しなくてはビジネスになりません。これもまた難しい作業で、できるかどうか不安に駆られる技術者は少なくないでしょう。そこで、ここにタグチメソッドを活用するのです。

 「高い目標」を満たし、「画期的な構造」を発想して、「複雑な設計」を実現する。これらの高いハードルを、「QTT」という道具をうまく使えば乗り越えられるのです。