早いのはGoogle社と組んだFCA社

──レベル4を目指す自動車メーカーはないのですか?

加藤氏:レベル4の実現を公言する自動車メーカーは、最近ようやく出てきたところです。昨年(2016年)までレベル4を目指すと言っていた自動車メーカーは、ほとんどありませんでした。ただ、実用化の時期については、各社でまちまちです。

──どの自動車メーカーが最も早いのでしょうか。

加藤氏:現時点で私が知る限りでは、欧米Fiat Chrysler Automobiles(FCA)社ではないでしょうか。米Google社と組んでいるからです。これを自動車メーカーと呼ぶかどうかという議論はあるかもしれませんが。それはともかく、他社がレベル3を実用化する2020年頃の段階で、FCA社は高速道路においてレベル4を実現するかもしれません。

──現時点では、ほとんどの自動車メーカーが「レベル3を2020年に実現する」という目標を掲げているのですね。

加藤氏:それが既定路線です。日本の自動車メーカーだけではなく、「戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)」を含めて日本(国)が目指す目標も、2020年にレベル3の実現ということになっています。

 実は、条件次第でレベル2の自動運転がレベル3並みに見えることがあります。基本的に、人間が運転に関与しなければレベル3と言えるからです。例えば、高速道路においてACC(アダプティブクルーズコントロール)とLKAS(レーンキープアシスタンスシステム)で走行を続けて人間がハンドルとアクセル、ブレーキを操作しなければ、限りなくレベル3に近い自動運転になっている状態と表現することが可能です。

 レベル3には2つの実現方法があります。[1]レベル2の延長線上でレベル3を実現する方法と、[2]システムを刷新してレベル4を満たし、その技術を使ってレベル3を実現する方法です。

 このうち、[1]のレベル2の延長線上でレベル3を実現する方法が、2020年までに各社が実用化を目指している目標です。これに対して、[2]のシステムを刷新してレベル4を満たし、その技術を使ってレベル3を実現する方法については、もう少し先の目標になると思います。つまり、「現行のレベル2をベースに、高速道路のような環境で専用レーンを設けて条件付きでレベル3を2020年までに実現しよう」というのが、国内市場における既定路線となっているのです。

──これら2つの方法は、技術的に大きく異なるのではありませんか?

加藤氏:かなり異なります。背伸びをして実現するレベル3と、レベル4を実現しながら余裕をもってこなすレベル3だからです。

──将来的には、レベル4の時代が来るのでしょうか。

加藤氏:法規制と社会システムもその方向で進んでいますから、近い将来、レベル4の時代が来るのは、間違いありません。

■変更履歴
掲載当初、米国運輸省道路交通安全局(NHTSA)の自動運転のレベル区分の説明に誤りがありました。NHTSAは現在「レベル0~5」の6段階に分けて定義しています。お詫びして訂正します。現在は修正済みです。