インテル 事業企画・政策推進ダイレクター 兼 名古屋大学 客員准教授 野辺継男氏
インテル 事業企画・政策推進ダイレクター 兼 名古屋大学 客員准教授 野辺継男氏
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 米Tesla Motors社の電気自動車(EV)の事故で、2016年7月に再び運輸省高速道路交通安全局(NHTSA)の調査が入った。今度はSUVの「Model X」。同年5月に起きた前回の「Model S」の事故では「Autopilot」機能が作動していたことが確認されている。今回はAutopilot機能が作動していたか否か判明していないが、なぜこうした問題が起きるのか。「技術者塾」において「クラウド、ビッグデータ、人工知能がクルマの進化を促す」〔2016年10月6~7日(木、金)〕の講座を持ち、自動運転に関する事業開発も手掛ける、インテル 事業企画・政策推進ダイレクター 兼 名古屋大学 客員准教授に聞いた。(聞き手は近岡 裕)

 米運輸省高速道路交通安全局(NHTSA)が、Tesla Motors社の電気自動車(EV)が起こした事故に関して新たな調査を開始した。事故は2016年7月1日にペンシルベニア州で起きた。車両はSUVのTesla Model Xである(前回の事故発生場所はフロリダ州で、車種はTesla Model Sだった)。

 今回の事故は、Model Xが高速道路(Pennsylvania Turnpike)を走行中にガードレールに接触した後、道路の反対側にある中央分離帯のコンクリートにぶつかり180度横転したというもの。幸い、死者は出ていない。

 この事故の発生は、米国では比較的広く浸透しているセイフティー&セキュリティー機能の一部として、エアバックが展開した結果が事故直後にTesla Motors社に自動的に通知された。だが、事故の詳細データ(例えば、Autopilot機能がオンであったことを示すフラグなど)についてはTesla Motors社に届いていないという。通常セイフティー&セキュリティーで利用する、全米に広がるPSAP (Public Safety Access Point)を介する通知は携帯網上をSMS (Short Message Service)で送信することが多く、事故に関連し得る詳細なデータはサイズによってはIP接続などで送信する可能性があり、数バイトのフラグデータぐらいはSMSで送信可能ではある。

 技術詳細は別として、早い話現時点では「Autopilot」機能が作動していたかどうかが分からないと、Tesla Motors社もNHTSAも報告している。

 このAutopilot機能が作動していたか否かで、検証すべきポイントが変わる。Autopilot機能が作動していた場合、まずはガードレールへの接触を避け得る機能定義になっていたのか、なっていたとすればそれが定義通り機能したのか否かの検証が必要になる。さらにガードレール接触後、反対側の中央分離帯に向かって跳ね返される過程で、Autopilot機能あるいは追加機能によって制動可能だったのか、その後の横転は避けられたのかといった検証も重要であり、今後の開発の必要性を示す重要な要件にもなる。

 一方、Autopilotが作動していない場合、通常の自損事故における過失の可能性などが検証すべき点となる。