群馬大学 大学院理工学府 電子情報部門 教授の石川 赴夫 氏(左)、元 群馬大学工学部電気電子工学科 非常勤講師(元三洋電機)の大朏 孝郎 氏(右)
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群馬大学 大学院理工学府 電子情報部門 教授の石川 赴夫 氏(左)、元 群馬大学工学部電気電子工学科 非常勤講師(元三洋電機)の大朏 孝郎 氏(右)

 今、機械や機器、システムの高機能化に加えて、IoT(Internet of Things)への対応が急速に進んでいる。支えるのは電気・電子(以下、エレクトロニクス)技術の進化だ。こうした進化に伴い、開発環境も変わりつつある。機械や機器、システムの全体設計を手掛ける機械系設計者に、電子回路の知識が求められるのだ。日本企業に何が起きているのか。「技術者塾」において「IoT化に役立つ機械系技術者のための電子回路の実務知識」〔2017年7月21日(火)〕の講座を持つ、群馬大学理工学研究院電子情報部門教授の石川赴夫氏と、元群馬大学工学部電気電子工学科非常勤講師(元三洋電機)の大朏孝郎氏の両氏に聞いた。(聞き手は近岡 裕)

──エレクトロニクスを専門としない技術者、特に機械系設計者の中で電子回路を学ぶニーズが高まっていると聞きます。何が起きているのでしょうか。

石川氏:「製品をうまく設計できない」というケースが増えているのです。今の機械や機器、システムといった製品(以下、システム)は、ほとんどと言ってよいほど電子回路があって初めて稼働します。小さなコンピューターが組み込まれており、それが発する電気信号に基づいてシステムが動く。コンピューターとシステムの間には必ず電子回路が存在するのです。

 電子回路の設計はもちろん、専門を履修したエレクトロニクス系技術者が行います。ところが、システム全体の設計については機械系設計者が担うことが多いのです。ここで、電子回路についてある程度知識がないと、機械系設計者はエレクトロニクス系技術者と技術的なコミュニケーションがとれません。技術的な説明が分からない上に、機能や品質などを高めるための議論もできない。結果、システムの設計がうまく進まないというわけです。