最低200本の論文を「起爆剤」に

──イノベーションにつながるアイデアを生み出すコツはありますか。

宮澤氏:論文だけとは限りませんが、論文を基に新しいアイデアを考え出すことは、研究者の基本です。ただし、論文に載っている情報が全て正しいとは限りません。そこで、私が研究者によく言っていたのは「反抗心を持て」ということです。反抗心を持つ人間が論文を読むと、論文に書かれていることを鵜呑みにせず、より良いアイデアを考えようとするからです。これが持続的成長の原点と言えるでしょう。こうしてアイデアを見つけたら、ライセンス(知財部門)に回して知財ビジネスも展開します。

 論文を利用する場合、1つのテーマについて最低でも200本は読み、内容をまとめて持って来るようにと、私は主任研究員に指示していました。どこからどこまでの範囲で、何が書いてあり、書いたのは誰で、実用化されているかどうかも調べるようにと言っていました。それを確認することにより、主任研究員に研究を進める素地が出来ているか否かを判断していたのです。内容をまとめて来るように指示するのは、論文をきちんと読んだという証拠が欲しいからでもあります。

 論文を読むのは、単に情報や知識を仕入れるためだけではありません。論文を、アイデアを生み出す「起爆剤」にするという意味合いもあるのです。論文を読んでいると、研究者という職業に就いている人間はアイデアが浮かぶものです。「自分だったら、もっと良いことができる」と常に考えているのが研究者だからです。

 ただし、論文を10本程度読んだくらいでは、自分ではアイデアを考えたつもりでも、新しいものではない可能性が高い。どこかの論文に書かれていることが多いのです。だから、200本は読むようにと指示していたのです。