──確かに、最近自動車のボディーの溶接に使われ始めていますね。

岡本氏:採用が広がっています。この理由は、少ないエネルギー量で溶接ができてひずみ量が少ないという先の特徴に加えて、非接触であることが挙げられます。ワークと光源が離れており、いろいろな方向からレーザーを照射できる。コントローラーで簡単に自在に焦点の位置を変えられるため、レーザーを素早く動かせる。しかも、エネルギー密度が高いため、素早い接合が可能です。

 これに対し、接触式では複雑な形状になると接合しにくく、ロボットなどの機械的な動きが必要となり、接合スピードに限界があります。コストもYAGレーザーの設備の価格がかなり下がってきており、採算が合い始めています。YAGレーザーは大気中で使うことができ、使い勝手が良いことも普及を後押ししています。これに対し、電子ビーム溶接の場合は真空中で使わなければならないという制約があります。

 そしてもう1つ、現在脚光を浴びているのが、異種材料接合や接着です。樹脂と金属、あるいは同じ金属でもアルミニウム合金と鋼といった、異なる材料同士の接合や接着です。ホンダは摩擦撹拌接合を使ってアルミ合金と鋼の接合を実用化しています。このとき、気をつけるべきは電食です。

 異種材料接合に関してもレーザーは有効です。金属と透明な樹脂を重ね合わせ、透明な樹脂側からレーザーを貫通させます。すると、金属表面で発熱し、それが樹脂に伝播して樹脂を溶かしてくっつけるといった方法が考案されています。

 異種材料接合という意味では、ろう接も当てはまります。例えば、車載部品であれば、熱交換器の接合などにろう接をよく使います。ろう接では、表面の前処理が不十分であると、ろうが行き渡りません。すると、接合強度が弱まるといった課題が出てしまう。従って、表面の洗浄がかなり重要になります。

 この点では、はんだと似ています。はんだも行き渡るか否か、すなわち、ぬれ性の良し悪しで判断され、ぬれ性が落ちるとろうづけ性が低下してしまう。表面の洗浄があまいと、ぬれ性が悪くなる。すると、接合強度が劣化するのです。