困るのは選択肢が多いとき


設計に生かしたいときに、具体的にはどのように相談したらよいのでしょうか。

岡本氏:例えば、材料技術部や生産開発部(固有技術の開発を行う)といった部門に専門家がいると思います。彼らは限定された領域で深く研究開発しています。そのため、具体的な接合技術、例えば「レーザー溶接をやってみよう」と設計者が決めたら、使いこなすためにはどのような点に注意すべきかをレーザー溶接の専門家に聞くことができます。もちろん、その接合法(レーザー溶接)の専門家がいれば、ですが。

 問題は、採用する接合技術を「これだ」と決めていない場合です。例えば、設計者としては接合技術の選択肢がたくさんある状態で、どの接合技術が最も適しているのかを知りたいというケースがあると思います。ところが、こうした場合に相談できる人が社内にはなかなかいない。

 レーザー溶接の専門家に相談できるのは、レーザー溶接を使うと決めた場合です。確かに、レーザー溶接の専門家に、スポット溶接やアルゴン溶接などとの技術比較は聞けることでしょう。多くの場合、冶金分野の専門家のところに行けば、その周辺の技術を含めて冶金的な接合技術に関するアドバイスを受けられます。しかし、違う分野、例えば接着剤に関して相談できるかといえば、技術の分野が大きく異なっているので知っている人は少ないのです。

 従って、幅広く接合技術を知っていれば、レーザー溶接の専門家に周辺技術を含めて相談した後、接着剤の専門家に聞きに行く。そして、ここでも周辺技術を含めて接着技術について専門家の知見を伺い、その情報を基に、次はろう接の専門家…と、渡りあるくことで設計に必要な情報を探っていくことができます。