テクノサポートオーテス代表、ワールドテック講師の岡本邦夫氏
テクノサポートオーテス代表、ワールドテック講師の岡本邦夫氏
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クルマのボディーで進む「マルチマテリアル化」を好例に、異なる材料や新しい材料を使うケースが増えている。狙いは極限の軽量化だ。こうした材料を使って製品を組み立てる際に重要となるのが接合技術である。たくさん存在する中から最適な接合技術を選択すべきだが、接合技術の知識について幅広く押さえている技術者は少ないという現状がある。「技術者塾」で「失敗しない設計」講座を持つ、テクノサポートオーテス代表、ワールドテック講師(元デンソー)の岡本邦夫氏に、接合技術の設計への活かし方を聞いた。(聞き手は近岡 裕)

接合技術に対する関心が技術者の中で高まっています。何が起きているのでしょうか。

岡本氏:接合技術を知らなければ、製品を設計することも組み立てることもできないからです。例えば、最近のクルマは実にさまざまな材料の組み合わせで出来ています。「マルチマテリアル化」でボディーの軽量化を極めようとする競争が激化しています。異なる材料を組み合わせるということは、接合を要するということ。材料の違いを踏まえながら、幅広い接合技術の中から最適なものを選んで適切に使わなければなりません。

 日本企業の技術者の多くは、従来の技術をそのまま踏襲する傾向があります。例えば、それまで溶接を使っていたら溶接を、接着を使っている場合は接着を使う、といった具合です。その方が大きな失敗をすることがないからでしょう。

 ところが、そのやり方が通用しなくなりつつあります。グローバル競争が激しくなる中で、より競争力の高い製品、すなわち、より品質に優れ、より軽く、より安い製品を造るためには、真の意味でより優れた接合方法を適用しなければならないからです。世界で勝ち残るためにギリギリの設計「限界設計」が求められる中で、従来の接合がそのまま使えるケースはどんどん少なくなっていくことでしょう。

 にもかかわらず、ほとんどの技術者が、たくさん存在する接合技術の中から最適なものを選ぶことをせずに、今手掛けているなじみのある接合技術に固執してしまいます。もっと幅広い接合技術の中から見極めて採用しなければ、世界で通用する製品設計ができなくなる可能性があるのです。