メディアスケッチ 代表取締役 兼 コーデセブン CTO、サートプロIoT技術講師 伊本貴士氏
メディアスケッチ 代表取締役 兼 コーデセブン CTO、サートプロIoT技術講師 伊本貴士氏
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 IoT(Internet of Things、もののインターネット)への注目度が日々増している。「世界の製造業のルールをガラリと変える」とも言われる技術だからだ。既にドイツは「Industrie 4.0(インダストリー4.0)」、米国は「Industrial Internet(インダストリアル・インターネット)」というキーワードを打ち出し、IoTを活用した新たな製造業のスタイルを確立しようとしている。これに対して日本では、IoTへの対応が必要であると認識する一方で、「IoTとは一体何なのか?」「IoT化に関して具体的に何をすればよいのか分からない」という声が依然として多い。

 「技術者塾」は、「体系的かつ体験的に学べる 製造業向けIoT講座」を企画した。製造業の技術者向けにIoTについて基礎から体系的に、かつ体験的に学べる全4回(全4日間)の講座だ。講師陣の1人である、メディアスケッチ 代表取締役 兼 コーデセブン CTO、サートプロIoT技術講師の伊本貴士氏は、日本の製造業がIoT対応を急がなければならないと指摘する。その理由は何か。(聞き手は近岡 裕)

──実際にIoT化の作業に取り組みながら進めていくといったスピードが必要(前回のインタビュー「製造業のIoTって何?」)とのことですが、じっくりと検討しないとIoT化で目指すべき方向が分からないのでは?

伊本氏:IoT化には3つのステップがあります。[1]見える化、[2]分析・制御、[3]効率改善(QCD)の自動化、です。私はこれらにゼロを加えたい。[0]プロトタイプ、です。プロトタイプを作って実際に進めてみながら、戦略を練っていく。この方法が最もスピード感があるからです。

 実は、IoT化に関しては、いきなり大規模なプロジェクトを立ち上げてもなかなかうまくいかないと、IoTの導入で先行する企業は言っています。従って、小規模なものから実践してみることをお勧めします。IoTは現在、そうした段階なのです。何を言いたいかというと、「IoTの世界では、プロトタイプを作ってみて初めて分かることがたくさんある」ということです。従って、「IoT化の目標がはっきりしない」という企業もありますが、それは当然のことです。

 なぜなら、ビッグデータを人工知能に解析させて出てきた答えは人間が予測できないものだから。予測できないことを、初めから目標として立てることはできませんよね? 人工知能の出す答えを見てみれば、ある傾向と対策が見えてきた。そこで、その点をもう少し解析してみる。その結果を現場に反映し、うまくいくか否かについて結果を見て判断する。これを繰り返して、人工知能を“育てていく”必要があるのです。

 結局、IoTのプロジェクトは日本が得意とする「カイゼン」です。すなわち、PDCAサイクルを何回も繰り返すことがIoTのあるべき姿。1度回せば済むものではありませんし、いつやれば、いつ終わるという話でもありません。IoTに関して情報を収集していても、いろいろな人があれこれ言い出して目標は変わります。そうしたことを考えている時間があるなら、まずは動いてスタートすべきです。