──事例からIoTを導入するための具体的な手順を読み取れるのではありませんか? また、すぐには分からなくても、じっくり時間をかけて自社なりのIoT化を考えていけばよいのではないでしょうか?

伊本氏:実は、体系化して学ばないと実際に自社でどのようにIoT化を進めていけばよいかは分かりません。さらに言えば、「これからどうしようか?」などと悠長に構えている時間的な余裕はないのです。検討段階では遅すぎて、もう明日にでも、どう進めるべきかという実践段階に入るべき時なのです。

 いたずらに煽っているわけではありません。ITの時代で何が起きたかを振り返ってみれば想像できると思います。インターネットはソフトウエアやコンピューターの世界をあっという間にグローバル化しました。これにより、ソフトウエアやコンピューターの業界には国境がなくなり、ビジネスルールが大きく変わりました。例えば、米Google社の製品・サービスは世界中に普及して使われている。これと同じようなスピードと激しさで、IoTはものづくりをはじめ、生活のあらゆる部分を変えてしまう可能性があります。

 日本企業のライバルは、今世界のどこかにある企業です。米国企業はもちろん、新興国の企業は、日本とは比べものにならないスピード感を持っている。そうしたライバルに負けないためには、すぐにでもどうすべきか、実際にIoT化の作業に取り組みながら、分析と改善を実施し、また進めていくといったスピードが必要です。

 今、「リーン開発」が世界で流行っています。アジャイル(迅速)でムダのない手法を取り入れることで、最も速く開発を行う方法です。リーン開発を戦略に掲げる企業が多いのは、スピード感があるから。検討ばかりしているのではなく、さっさとプロトタイプを作って進めてみる。その上で、改善とリサーチを同時に行って開発を進めていく。世界にはこうした戦略を持つ企業があり、対抗策を練らなければならないことに日本企業は早く気づくべきです。


──伊本氏のインタビュー──
[1]「製造業のIoTって何?」---理解しづらい理由
[2]「今すぐ飛び込まないと、負けますよ」---製造業のIoT対応
[3]体系的かつ体験的に学ばないと実践できない理由---製造業のIoT対応