だから、過剰品質と過剰機能を求め続ける

──ボトムアップで競争力が高まるなら、その方向を極めるという判断があってもよいのでは?

國井氏:ボトムアップが悪いわけではありません。ボトムアップで企業が活性化して業績が上がる時代なら、それでも構わないでしょう。実際、ボトムアップは日本企業の強みと言えます。QC活動による改善で、今あるものをより良くし、ムダを排除することができる。いわゆる「造れば売れた」時代は、高品質・多機能の追求でよかった。それはQC活動、すなわちボトムアップと相性がとても良かったのです。

 その一方で、新しいものは生まれにくい。新しい製品を生み出すときには、やはり、強いトップダウンで現場を引っ張っていく必要があります。実際、時代は変わりました。新しい製品や特徴ある製品を必要とする時代になっています。すなわち、企業が戦略を持って設計する製品が求められる。こうした時代に上から指示したり命令したりしないと、組織はばらばらで間違った方向に進んでしまう可能性があります。

 日本企業の場合、時代やビジネス環境のさまざまな変化を受け、顧客のニーズが変わった。これを受け、ある時点から製品の設計を変えなければならなかったのに、現場の人たちは相変わらず、高品質と多機能化を目指してしまいました。これにより、品質面では過剰品質を当たり前と捉える顧客を育ててしまいました。例えば、クルマです。フロントフードの裏側の小さな傷もダメだという顧客要求をつくってしまった。多機能化では、脱衣場に置く洗濯機にエアコン機能を搭載した家電や、イオン発生装置が付いた大画面液晶テレビを設計する企業も出てきました。

 冷静に判断すれば、これらは「過剰品質」であり「過剰機能」ではないでしょうか。でも、これは現場が悪いのではありません。彼らは一生懸命に働いている。設計マネージャーがしっかりしないと、現場は迷走してしまうという例です。ここまで言えば、設計のカギを握る設計マネージャーには今後、ますます強いリーダーシップが求められるということが分かってもらえるでしょう。