國井技術士設計事務所所長の國井良昌氏
國井技術士設計事務所所長の國井良昌氏
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 コスト競争力の高い設計が求められている。ところが、既存の低コスト化活動に限界を感じている技術者は少なくない。「技術者塾」では、低コスト化活動のための手法を学ぶ講座「5割ダウンを体感する! 設計/製造/調達の新コスト改革」を開催する。講師は、設計系講座の人気講師である國井技術士設計事務所所長の國井良昌氏。

 本講座で注目すべきは、品質とコストを両立させる新たな低コスト化手法「コストバランス法」だ。実は、大手韓国メーカーがこの手法を使って先行する日本製品の弱点を分析して実績を上げた。コストバランス法とは何か。(聞き手は近岡 裕)

──中国や台湾、韓国を中心とした新興国企業が急速に力を付け、防戦を強いられる日本メーカーが2010年以降に顕著に増えたという印象があります。日本企業の設計面での課題は何でしょうか?

國井氏:日本企業は製品の品質や機能を過度に追い求めすぎではないでしょうか。品質や機能を大切にすること自体は間違ってはいません。しかし、設計において高めるべき「科目」には、品質(Q)とコスト(C)、納期/開発スピード(D)、そして特許(Pa)があります。その中で、日本企業の多くは極端に品質を重視する一方で、コストについては後回しにしています。場合にはよっては何もしていません。

 これに対し、新興国企業は品質とコストをまとめて「1科目」にしました。それが「コストパフォーマンス(CP)」と呼ばれるものです。例えば、韓国Samsung Electronics社(以下、Samsung社)がコストパフォーマンスの高い液晶テレビやスマートフォンを造ることで、海外市場において日本企業からシェアを次々と奪っていったことは記憶に新しいと思います。その後、韓国企業が通貨高に陥って失速するのを尻目に、さらにコストパフォーマンスに優れた製品を造ることで現在、存在感を示しているのが中国企業や台湾企業です。

 不思議なことに、日本人は食事やホテルなど日常生活に関するものにはコストパフォーマンスの良し悪しを考えます。ところが、クルマや家電製品、産業機器など工業製品を企画・設計する際には、コストパフォーマンスに言及することがほとんどありません。