──シンプルで強力な低コスト化ツールですね。すぐに実践できそうです。

國井氏:その通りです。必要な学問は「中学1年の数学」ですから。しかも、コストバランス法はまだまだ新しい低コスト化ツールですから、既存の低コスト化ツールでは得られなかった効果が期待できます。また、部品点数が多いほど低コスト化活動が楽しくなる、すなわち効力を発揮します。

 ただし、弱点もあります。1つは部品点数が極端に少ない製品を苦手とすることです。2~3個の部品で構成される製品には適用することができません。もう1つは、誰が採用しても同じ答えが得られることです。従って、競合企業よりも1日でも早くコストバランス法を実施して分析し、結果を基に特許化するなどスピード開発が勝負になります。従って、何度も会議を開くような企業には不向きです。

 コストバランス法は、自社製品の低コスト設計だけではなく、競合製品の分析ツールとしても活用できます。競合製品を部品に分解し、コストバランス法を実施します。すると、モーメントの絶対値が大きい部品は、その競合製品のアキレス腱(弱点)であると分かるのです。従って、後発メーカーには特に役に立ちます。先行メーカーの製品の弱点を攻撃する製品を設計するための戦略を立てることができるからです。