従業員の能力の意欲をどう判断するか

能力と意欲を高めるために従業員の育成が重要なことは分かりました。しかし、能力と意欲の向上具合をどのように判断するのでしょうか。

堀切氏:それには「見える化」を使います。改善の能力であれば、例えばある製品に関して「1日の生産」を見える化しました。1時間ごとに計画を立て、それに対して結果がどうなっているかを比較したのです。大抵の場合、計画と実績には差が生じます。差があるということは問題があるということ。そこで、この問題の対策を考えて実行してもらいました。品質に関しても同様に不良率を見える化し、その改善策を考えて実行してもらったのです。

 意欲の向上具合に関しては、私は1人ひとりにアンケートを実施しました。改善の目標を明確に意識していますか、周りとの連帯感や一体感を感じますか、など10項目を取り上げて点数化することで見える化しました。

 見える化は、とても大切な仕掛けです。見える化するかしないかで、成果の大きさは全く違うものとなります。見える化することで初めてPDCAのサイクルを回すことができる、すなわち改善を着実に進めることができるからです。

 初級段階の見える化は、生産と品質、5S、仕事の人員の配置(仕事の分担)です。これにより、従業員は自分の仕事は何か、隣の人の仕事が何か、リーダーが何を考えているかといったことも分かるようにもなります。それまでは毎日同じ仕事をこなすだけで、隣の人が何をしようが知ったことではないといった環境だったのに、見える化することでチームの一体感が醸成されていきます。

 そして何より、日々の改善活動の成果が目に見えて分かります。少しでも活動すれば良くなったことを実感できる。達成感を味わい、さらに改善に向かう意欲を高める。見える化が、こうした正のスパイラルを加速させるのです。