「改善の成果=Σ(各従業員の能力×意欲)」

TPSが少しずつ効果を発揮してきましたね。この達成感がTPSを動かす1つのカギになっているようですね。

堀切氏:TPSでは改善の成果を「改善の成果=Σ(各従業員の能力×意欲)」のように表すことができます。すなわち、各従業員の能力と意欲の積の総和です。従って、改善を進めて成果を出すには、従業員の能力と意欲の両方を高める必要があります。そのために、従業員を育成しなければなりません。これが「TPSの本質」です。TPSで永続的な改善と成長を実現できるか否かは、ここにかかっているのです。

 逆に言えば、従業員の能力と意欲を高める教育をせずに、改善のコンサルタントを雇うだけでは、一時的な効果はあるかもしれませんが、改善は持続せずその後の成長も難しいと思います。

 そのため、私は生産現場でリーダーへ改善活動の指導を行うと同時に、能力を高めるためにTPSを中心に講義を実施しました。この講義で、何がムダか、どうしてムダが発生するのか、なぜ品質不良が発生するのか、といった基本的なことから教えていったのです。

 意欲については、生産現場での改善指導で高めていきました。先の通り、実際にリーダーに改善活動を実施してもらい、その結果を褒めることで意欲を高めていくのです。最初はどんなに小さなことでも構わないので、それを褒めます。すると、達成感を覚えて改善の意欲が高まる。結果が出る、褒める、意欲を高める、これを繰り返していき、意欲向上と改善結果の「正のスパイラル」を描いて意欲を高めていくのです。