まずはリーダーに達成感を与える

前途多難な状況に思えます。

堀切氏:目標は1年で黒字化することでした。私は生産現場を2時間ほど見て、大小織り交ぜて数百項目の物理的なムダを見つけました。これらを全て改善すれば、1億円の原価低減はきっと達成できるだろうと感じました。

 トヨタ自動車では、ムダを見つけると管理者が作業者に改善を実行するように指示します。作業者が改善の実行部隊だからです。ところが、私が指摘したムダの7~8割は管理者にはムダであるとは理解されませんでした。例えば、私が「不良率が10%もあります。これはムダですね」と指摘しても、「この製品は造るのが難しいのです。この10年間、不良率はずっと10%前後となっています。だから、これくらいの不良率は当たり前です」とか、「確かに1%程度に抑えた方がいいですね。でも、どうしたらよいか分かりません」といった言葉が返ってくるのです。

 管理者もリーダーも改善の仕方が分からない状態なので、最初は私が具体的な改善の進め方を指導しました。「今、部品の配置はこうなっていますが、それをこうしたら取りやすくなって改善できますよ」といった具合です。こうして具体的に改善内容を指導し、リーダーに改善を実行してもらいます。すると、成果が出てリーダーは達成感を覚えます。この達成感を味わうことで、リーダーは改善に対する意欲を高めていくのです。すると、「あ、この部品の配置もこうすればもっと取りやすくなりますよ」「こうすれば作業時間が短縮できますね」といったように、リーダーが自らムダを見つけていくようになるのです。