──日本の接着剤メーカーは新しい接着剤の開発に積極的に取り組んでいるのですか?

若林氏:会社によって差はありますが、物足りないと言えるのではないでしょうか。「これからは提案型営業が必要だ」と言い出してから20年間ほど経ちますが、自動車メーカーをはじめ顧客の所に行って「御用聞き」をするような旧態依然とした営業スタイルが未だに見られます。勝負は他社よりいかに安い見積もりを提供し、納期を短縮するか。今なら「原油価格が下がっていますから、当社ならいち早く安価に提供できます」といった具合です。

 ある自動車メーカーの幹部がこう愚痴っていました。「当社は協力メーカーに原価低減を強いると世間から批判されることがある。しかし、実態は違う。協力メーカーの方から価格を下げる提案をしてくることが多いのだ。逆に、新技術の提案はあまりにも少ない」と。この言葉が全てを言い表しているわけではないとは思いますが、接着剤メーカーは肝に銘じ、新製品技術およびアプリケーション技術の開発により一層力を入れるべきです。

 接着剤メーカーに限らず海外のメーカーは、マーケティングを行って世の中の欲しいものを探ってから開発するマーケット・イン型のものづくりが根付いています。これに対し、日本のメーカーは、顧客から研究開発のテーマをもらうケースが今なお目に付きます。要は、自動車メーカーが技術を考えて、言われた通りに開発するだけ。そろそろ本気で新技術提案型の営業に切り替えなければ、世界に置いて行かれるかもしれません。