クオルテック信頼性試験センター所長(元 デンソー)の前野 剛氏
クオルテック信頼性試験センター所長(元 デンソー)の前野 剛氏
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 EMC(電磁両立性)のトラブルで頭を抱える技術者が増えている。製品の多機能化や高機能化、高速化でEMC対策がどんどん難しくなっているからだ。車載電子機器はその筆頭格とも言える。これに対し「コツを押さえればEMC対策の解は見つかる」と指摘するのが、クオルテック信頼性試験センター所長の前野剛氏だ。
 「技術者塾」で「パワーエレクトロニクスを含む、車載電子機器のEMC対応設計」の講座を持つ同氏に、EMC対策の現状の課題や対策のポイントについて聞いた。(聞き手は近岡 裕)

車載電子機器を代表に最近の電子機器でEMC対策に悩んでいる回路設計者が多いと聞きます。まずはEMC対策について回路設計に詳しくない人にも分かりやすく教えて下さい。

前野氏:基本的なことから説明すると、EMCとは電子機器が備えるべき電磁的な不干渉性および耐性のことです。EMCにはEMI(電磁妨害)とEMS(電磁感受性)の2つ側面があります。EMIは、ある電子機器が動作する際に発する電磁的雑音(以下、ノイズ)が、周辺にある他の電子機器の動作に影響を与える(妨害する)現象のこと。逆に、EMSは周辺にある他の電子機器が発する雑音によって、電子機器が妨害を受ける現象のことです。

 つまり、EMC対策とは自分自身が放出する雑音を抑える一方で、周囲からの雑音によって誤作動することを防ぐための対策です。平たく言えば、ある電子機器がノイズに関して「加害者」にも「被害者」にもならないようにする、ということです。