プラーナー会長 栗山 弘氏
プラーナー会長 栗山 弘氏
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 自動車のリコール問題や電機製品の市場クレームが日本企業を悩ませている。その原因の1つが「ばらつき」であり、これを解決するには公差設計を正しく行う必要がある。そう説くのが、「技術者塾」において「公差解析ソフトの演習で学ぶ 効率的な公差設計手法」〔2017年3月13日(月)〕の講座を持つ、プラーナー会長の栗山 弘氏だ。同氏に公差設計を習得する意味や、幾何公差との関係について聞いた。(聞き手は近岡 裕)

──公差設計に関して、日本企業は最近どのような動きを見せていますか。

栗山氏:顕著なのは、幾何公差への対応の動きです。2016年3月に日本工業規格(JIS)が改正され、幾何公差に対応した図面を作成することが必須となりました。これを受けて、幅広い業界の日本企業からの問い合わせが増えています。「幾何公差を何とかしたい」という切実な声です。

 私は、70社で計1000テーマを越える設計課題の解決を公差設計で支援してきました。最終的なアウトプットとしては、100%幾何公差を有効活用した正しい図面となります。ところが、最近は「幾何公差図面化だけ」を望む声が聞こえることが気になっています。もちろん、そのような偏った考え方をしている人は多くはないと思っていますが。

 確かに、疑う余地はなく幾何公差は必須です。しかし、多くの経営者が真に望んでいるのは、単に幾何公差を使った図面に書き換えることではありません。図面の質を高める「設計改革」なのです。例えば、外資系企業の日本法人は、親会社から「公差設計と幾何公差を共に習得するように」と指示されて私のところに相談にきます。

──幾何公差への対応だけでは不十分、ということでしょうか。

栗山氏:いいえ、そうではなく、もったいないということです。結論から先に言えば、公差設計と幾何公差は「クルマの両輪」なのです。逆に、両輪と捉えることで相乗効果が生まれ、図面の質を高めることができます。JIS改訂もあって、幾何公差に対応することはもはや必須です。しかし、公差設計を実践することで、格段に図面の質は向上します。

 多くの設計者が実践しているはずの公差計算(緊度計算とも言う)の目的は次の4項目です。

[1]製品機能の実現
[2]製品品質の安定化
[3]部品公差値の決定
[4]重点管理ポイントの明確化(どこが基準で、どこをどれだけに管理したいか!)

 これらを達成しなければ図面の質は高まらず、設計改革とは到底呼べません。そして、その改革ができるのは公差設計なのです。