軽合金製部品を1/3に軽量化

──自動車分野向けにはどのような動きが見られますか。

小松氏:エネルギーを効率的に使うために、自動車分野と航空機分野では軽量化の技術開発が加速しています。鋼をアルミニウム合金やマグネシウム合金といった軽合金に換えると、質量をざっと1/3に抑えることができる。さらに進めてアルミ合金とマグネシウム合金をプラスチックに置き換えると、質量をそのまた1/3に軽くできる可能性があるのです。

 ただし、単にプラスチック化するだけでは十分な強度が得られないという課題がこれまでありました。この課題を克服するために、強化材に炭素繊維やガラス長繊維を使う方法が欧州では先行しています。例えば、フランスAirbus社の航空機の部品では炭素繊維強化プラスチック(CFRP)が既に使われています。これをより低コストで素早く造るべく、射出成形で加工するための開発を欧州の企業が大学を巻き込んで進めているのです。もっと有名なのは、ドイツBMW社がボディーにCFRPを積極的に使ったクルマを実用化していることです。こうして技術が確立されてきたことで、今後はロボットの可動部や工作機械部品、産業機械、量産車、自転車といったさまざまな製品に、CFRPなどのプラスチックが適用されることでしょう。欧州企業からはその息吹を感じ取ることができるのです。

 炭素繊維自体は現在、日本メーカーが世界シェアの7割を占めています。ところが、炭素繊維をプラスチックと複合化させたり、加工したりする技術については欧州の後塵を拝しています。これはやはり、欧州とは異なり、日本には航空宇宙産業という「出口産業」が少ないことが大きく響いていると思います。しかし、方法はあります。例えば、フランス企業と日本企業の協業事業体で金型や成形技術を開発していく方法が考えられます。これが日本企業と米Boeing社等という組み合わせに発展するかもしれません。

 日本は金型や射出成形機の技術は高いのですが、応用先としては自動車産業と電機産業に大きく依存しています。いつまでも同じ産業の枠の中で考えているため、どうしても新しい発想を得にくく、行き詰まり感を覚えている技術者が日本企業に増えているのだと思います。