メディアスケッチ代表の伊本貴士氏
メディアスケッチ代表の伊本貴士氏
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 2018年は製造業界にとって節目の年。IoTを既に導入した企業が、導入に出遅れた企業を引き離して成長し始める——。「技術者塾」で「『第4次産業革命』時代に必須の新技術【戦略編】」「同【実践編】」の講座を持つメディアスケッチ代表の伊本貴士氏はこう語る。これからの改善にはIoT(Internet of Things)や人工知能(AI)、ロボット、ブロックチェーンの新技術の導入が必須。これらがなければ、変化が著しい時代の流れに合わせて生産現場を変える「カイゼン2.0」を実現できないという。(聞き手は高市清治、近岡 裕)

──企業とIoT(Internet of Things)との関係を追いかけているコンサルタントの立場から見て、2018年はどのような年になると考えますか。

伊本氏:企業の動向を俯瞰すると、2018年の1年間でビジネスの在り方が大きく変わると思います。結論から言うと、IoTを導入した企業が、導入していない企業を引き離して成長し始めることでしょう。準備体操の時間は2017年で終わり。2018年は勝負の年です。

 2018年後半には、既にIoTを導入している企業が結果を出し始めます。他社の様子をうかがい、他社事例の結果を確認してから2018年後半になってやっとIoTを導入するような企業は、大きく出遅れ、場合によっては手遅れになる可能性が高いことでしょう。

 そんなに急激に変わるわけがないと思うかもしれませんが、現実の世界は急激に変わりつつあります。例えば自動車1つとっても、電気自動車の無線による給電、自動運転の公道実験の実現、人工知能(AI)搭載自動車の発売、3Dプリンターによるボディー製造など、これらは全て2017年の1年間で起こったことです。

 新たな技術の恩恵を被る企業は、その技術をライバルに先駆けて早い段階で採用し、時代に合わせて変化できた企業と決まっています。挑戦的な企業が、結果的に大きく成長することは歴史が証明しています。既にビジネスに国境はありません。今後はますます、どこの国でビジネスしているかは意味をなさなくなります。その中で世界のライバルに先駆けてスタートを切るには2018年前半が最後のチャンスではないかと私はにらんでいます。

短期間で安価なIoTによる改善も

──IoTの導入で十分でしょうか。

伊本氏: IoTは基盤です。つまり、入れると良いものではなく、入れて当たり前のものです。今後、訪れるであろう「第4次産業革命」は、IoTを土台にして、人工知能(AI)とロボット、分散型ネットワーク(ブロックチェーン)を活用し新しい価値を生み出すことで実現できます。AIやロボットなどは、IoTなしでは活用できません。

 これらの4技術を導入するか否か。ここで企業にとっての勝負が決まります。ですから、土台となるIoTを導入しないという選択肢はありません。IoTを導入した上で、そこで収集したデータをどのように企業活動に活用するかという段階に来ています。

──具体的な成果の事例を教えてください。

伊本氏:例えば、2017年の1年間で、金融業界ではAIの導入が当たり前になりました。外資系のある金融企業では、AIを導入して人間のトレーダーを大幅に削減しました。

 既に金融の分析や取り引きは人工知能に置き換わりつつあります。世界に目を向けるとさまざまな仕事が急速に人工知能に置き換わっています。特にマネジメント職、事務職は今年1年で急速に変化するでしょう。

 これは、AIにより職が失われると見ることができますが、その一方で多くの日本企業は今、急激な少子社会を前にして人手不足に悩んでいます。そこで、一部の業務でAIに人間の肩代わりをさせることで、業務の効率化と同時に、業務の効率化を図って人手不足を補うことができます。

 言ってみればAIは、「働き方改革」を進めながら、企業の成長を維持するのに有効なツールにもなるのです。逆に「働き方改革」ができない企業は、たとえ黒字であっても人員不足から事業継続が難しいかもしれません。