──プロフィタブル・デザインは、今後もますます必要となるのでしょうか。

北山氏:これから20年、30年先を考えると、ベテランがいなくなって品質に関して多くの日本企業が悩む時代が来ることは想像に難くありません。既に「2007年問題」として、企業の礎を築いたベテランからの技術伝承不足の課題が浮き彫りになっています。再雇用制度などでベテランの引退を引き延ばしている日本企業もありますが、この先10年ももたないでしょう。ベテランのナレッジを可視化して伝承しなければ生き残れないことは、多くの方が感じているはずです。

 分業化が進み、製品全体を理解している人が減っている現状において、製品品質を確保して競争力を高めていくことは簡単ではなくなりました。だからこそ、ベテランがいる間にナレッジの可視化をしなければ生き残れません。

 また、日本企業の固定費構造もこの先10年くらいで大きく変わっていきます。工場についても今、中国中心から他のアジア諸国へ移転したり、国内へ回帰したりしている日本企業は多いと思います。また、インダストリー4.0というキーワードで工場設備の刷新を検討している企業も増えています。これらの影響を受け、新規固定費への投資が盛んになっている状況があります。

 ここで重要となるのが、固定費マネジメントです。新規で投資した固定費は徹底的に使い倒すマネジメントが必要です。新規性ばかりを求めても固定費が大きな負担となり、身動きがとれない状況に陥ってしまいます。固定費構造が大きく変わる時代を今後迎えるからこそ、固定費を可視化してマネジメントしていく意識と仕組みの構築が欠かせません。

──プロフィタブル・デザインを学ぶ上でのキーポイントを教えてください。

北山氏:繰り返しになりますが、企業の資産はナレッジ(苦労・工夫・失敗などの経験)です。いかにベテランのナレッジを棚卸しして共有した上で、それらのナレッジをより高めていけるかが重要となります。そのためには、「設計を情報化(数値化)」しなければなりません。CADに代表されるように、設計は“絵”や“線”で仕事をしている状況です。しかし、絵や線には限界があるため、設計の情報化(数値化)が欠かせません。合理的、科学的、組織的な視点で設計を見つめ直すことができれば、さまざまな改革ポイントが見つかると思います。

──技術者塾の講座では、どのようなポイントに力点を置くのですか。

北山氏:先の通り、ナレッジを可視化して標準化し、さらに高度化できる進め方を仮設したいと思います。加えて、標準化やルール化の誤解を解きたいと考えています。

 多くの方が属人的な“バラバラ設計”には問題があり、標準化を進めなければならないと認識しています。しかし、いざ具体的な検討に入ると標準化は難しいと言うのです。標準化に対しては「総論賛成、各論反対」。その理由は、「標準=守らされ、我慢を強いられるもの」となっているからだと思います。属人的なバラバラ設計をしていたら非効率と思いながらも、標準化したら自由や創意工夫が奪われると恐れて、結果的に前向きになれない状況となっているのです。競争力を保ちつつ効率化を狙うという難しい取り組みとなるため、この点については講座で詳しく解説したいと思います。

──想定する受講者はどのような方ですか。また、受講することでどのようなスキルを得られますか。

北山氏:経営者や技術部門の管理者、原価部門の管理者、改革推進者などです。経営者の方は事業収益の源泉が何か、儲かる体質に変わるための要素を学べます。ここ数年、景気回復の兆しから改革を進めている企業が増えています。本講座では正しい認識の下で改革を進めるポイントを学べます。一方、技術部門や原価部門の方には、設計と原価をどのような点で融合していくべきかを学ぶことができます。

 本講座を受講することでナレッジの可視化の方法を理解できます。加えて、そのナレッジを使って設計標準化・設計高度化のポイントを理解できます。さらに、コスト管理や原価見積手法なども理解することができます。