コマツとGEの成功例

──IoTを使った新しいビジネスモデルの構築に関して成功事例はありますか。

高安氏:有名なものに、コマツの建設機械稼働管理システム「KOMTRAX」があります。従来は工事の施工だけを行っていたのに対し、このシステムでは、ドローンを使って測量して工事計画を立案する。その上で、データを収集して自動で建設機械を動かし、実行したデータを管理して次の工事に生かすべくフィードバックする。さらに、これらのデータを工場にもフィードバックして業務改善を行います。

 最近では、協力会社を巻き込んで効率化するところまで進めています。コマツは自社の工場をIoT化し、さらに部品などを造る協力会社の工場のIoT化も進めています。これにより、リアルタイム管理を自社工場から関連会社や協力会社まで実現する考えです。今、いろいろな業界で叫ばれている人材不足もこのシステムで解消することができます。

 海外では米General Electric社(以下、GE社)が有名です。従来は航空機のエンジンメーカーとして製品を販売していました。これをIoT化により、予防保全のサービスまで展開することができました。エンジンにセンサーを付け、運行状況に関する全てのデータを収集する。それを分析し、故障する前にその可能性がある部品を取り寄せる。これにより、運行に支障がないように整備することができるのです。どのようにすれば低燃費で飛行できるかをパイロットにアドバイスすることもできます。

 GE社はこうして自ら実証したIoTシステムを、製造業向けIoTプラットフォーム「Predix」として商品化しています。これにより、「もの」から「ソリューション」、そしてIoTプラットフォームまでビジネスを広げました。

 これら2社はビジネスモデルまで変えた典型的なIoTの成功事例でしょう。

──いろいろな企業がIoTプラットフォームを商品化しています。どれを選んだらよいのか選択に迷いそうです。

高安氏:IoTプラットフォームは、文字通り企業がIoT化を実現するための基盤です。現在、さまざまな総合電機メーカーやIT企業などがIoTプラットフォームを提供しています。クラウドベースで使えるものが多く、IoTを実現する上で必要な機能が一通りそろっている。具体的には、データの蓄積や監視、異常の検知、人工知能を使って次にどういうことが必要かを分析することができます。製造業で必要になるアプリケーションソフトウエア(アプリ)が提供されていたり、自社で開発したいというニーズに備えていろいろなプログラム言語が利用可能な開発環境が用意されていたりします。

 IoTプラットフォームを使うことでIoT化の敷居を下げることができます。使った分だけ課金される仕組みになっていることが多く、大量のデータを扱ったり、いろいろなアプリを使い出したりするとコストが掛かっていきます。最初の一定期間は無料というものもあるので、試してみて使いづらければやめることもできます。

 IoTプラットフォームを選ぶ際は、自社が造る製品や提供するサービスに適したものを選ぶとよいと思います。