みなさまごきげんよう。
 フェルディナント・ヤマグチでございます。

 いやしかし民族問題は根深いです。まさか日本にいて民族紛争を目の当たりにするとは思いませんでした。

 日曜日の朝、娘がパンケーキを食べたいと言うので原宿の「Bill's」に連れて行きました。

 朝から大行列で凄い人気です。食事を終えて明治通りを新宿方面に向かうと、機動隊の車両が道の左右にミッチリ停まっていて、なにやら物々しい雰囲気です。

平和な日曜日の朝に何事でしょうか
平和な日曜日の朝に何事でしょうか

 道を横切ろうとする外国人の青年に、何の騒ぎですか?と尋ねると、「No English.」と言う。それではと日本語で聞くと、やはり「ニホンゴワカラナーイ」と。

 やむなくクルマを停め騒ぎの方に向かうと、トルコ大使館の前が大変な騒ぎになっている。

トルコ大使館前です。みなさん殺気立っています
トルコ大使館前です。みなさん殺気立っています

 スマホで写真を撮っていると、武装した警官が話しかけてきた。

警官:「日本人?」

F:「そうですけど」

警官:「報道の方じゃないですよね」

 ここで日経ビジネスオンラインの取材だよボケ!とカマしても良いのですが、何しろ見た目が記者らしくない。インチキとバレたら編集部に迷惑がかかる。そもそも何の騒ぎかも分かっていないのですから話になりません。

F:「あの……何の騒ぎかなと思って……単なる野次馬です」

警官:「あー野次馬ね(笑)。ここは危ないから、見学するなら道の反対側に行ってください。さっきも怪我人が出て救急車が出たばかりなんです」

 なかなか親切なお巡りさんです。彼の言に従い、道の反対側に行きました。

ここにトルコ大使館があることすら知りませんでしたが……
ここにトルコ大使館があることすら知りませんでしたが……

 するとガードレールに腰掛けて本職の記者と思しき人達が3人談笑している。何の騒ぎか聞いてみましょう。

F:「あの……スミマセン。これは何の騒ぎですか?」

記者:「トルコ大使館の在外投票ですよ。11月1日に総選挙があるんです」

F:「ははぁ。在外投票……」

記者:「公民権の行使ですな」

F:「なんかモメているようですけど」

記者:「クルド人とトルコ人がね、対立しているんです」

 そういえばトルコでは6月に行われた総選挙で、クルド人系左派政党の「国民民主主義党」(HDP)が大躍進する一方で、第一党である、「公正発展党」(AKP)が過半数割れしたのでした。その後、首都アンカラでは、HDPの集会を狙った爆弾テロが起き、100人を超える犠牲者が出たりもしています。

 私が大使館前を通りかかった時間には乱闘騒ぎはほぼ収束していましたが、「朝はそこらじゅうで殴り合いになって凄かったよ」と記者さん談。「平和ニッポンじゃピンと来ないだろうけどもねぇ」とも。

それでも「あの野郎、ペットボトル投げつけやがったんだ!」と激高するお父さんを、警官がマアマアと窘めるシーンは随所で見られました
それでも「あの野郎、ペットボトル投げつけやがったんだ!」と激高するお父さんを、警官がマアマアと窘めるシーンは随所で見られました

 佐藤優氏は、遠く離れた日本での乱闘騒ぎをして「遠距離ナショナリズム」と呼んでいます。なるほどうまく言うものです……と感心している場合ではないのですが。