組込みシステム技術協会(JASA)では、ロボット技術に関連するさまざまな活動を行っている。その1つが「OpenEL(Open Embedded Library)」という組み込みシステムや、ロボットを対象とするソフトウエアプラットフォームの国際標準化活動であり、もう1つが「ETロボコン」というロボットコンテストの主催である。ETロボコンでは、OpenELがリファレンス実装の対象として使用されている。本稿では、JASAのOpenELに対する取り組みや、ETロボコンでOpenELをリファレンス実装の対象にしている背景について解説する。

OpenELとは

 OpenELとは、ロボットで用いるアクチュエーターやセンサーなどのデバイスを制御するためのインターフェースを標準化した組み込みシステム向けのオープンなライブラリーである。JASAの「プラットフォーム研究会」が中心となって仕様策定を進めてきたソフトウエアプラットフォームだ。2015年5月から、「OpenEL国際標準化委員会」という組織が仕様策定の作業を引き継いでいる。

 JASAの技術本部には、各企業が得意分野を持ち寄って技術の調査研究などを行っている4つの委員会(安全性向上、ハードウエア、技術高度化、応用技術調査)がある。その中の応用技術調査の委員会の下にプラットフォーム研究会がある。プラットフォーム研究会はその名前の通り、組み込みシステム向けプラットフォームの調査・利活用の研究を目的としている。2011年からロボット用ソフトウエアのプラットフォームの調査研究とOpenELの仕様策定を行ってきた。

 同研究会は2011年当時、将来拡大が予想されるロボット市場に注目してロボットのソフトウエアプラットフォームを調査した。その結果、ソフトウエアのプラットフォームとして産業技術総合研究所(AIST)の「RTミドルウェア」や、米Willow Garage社の「ROS」などがあることが判明した。しかし、これらはミドルウエアのレイヤーであり、ハードウエアに近いレイヤーにはソフトウエアのプラットフォームが存在していなかった。このレイヤーは各デバイスベンダーが独自にAPI(Application Programming Interface)の仕様を策定・実装しているため、ロボット開発で各デバイスの仕様のすり合わせに苦労することが多いという問題点が明らかになった。そこで研究会では、ハードウエアに近いレイヤーのソフトウエアの実装仕様を標準化するべく、OpenELの仕様策定を始めた。