IoT(Internet of Things)技術の急速な発展に伴い、自動車の分野でも“つながるクルマ”への進化が進んでいる。例えば、自動運転においては車車間、路車間の通信を伴うさまざまなシステムの連携が行われ、従来の自動車には存在しなかった新たな技術が多く導入されている。

 このような技術の変化は、車載システムの開発スタイルにも大きな変化をもたらそうとしている。「走る、曲がる、止まる」といった従来からの自動車の基本機能を単独で考えれば、それぞれの完成車メーカーに技術的ノウハウの蓄積があり、それに基づいた改良の方向性を部品メーカーに伝えることで、仮に要件が詳細かつ十分に定義されなかったとしても、経験に基づいた推定によって最終的には期待通りの製品が開発されてきた。

 しかし、先進運転支援システム(ADAS)や自動運転などの、自動車に新たに導入される技術の多くは、現時点では自動車業界として蓄積したノウハウが少ない。そのため、完成車メーカーにとっても部品メーカーにとっても、全体の完成イメージを十分に持つことができない場合がある。その結果、要件の誤解釈による問題が生じやすい状況が生まれている。

 また、これらの新しい技術分野は、発展がまだまだ過渡期にあり、開発の構想段階において定義された要件を、リリースまでの期間における市場ニーズの変化や他社の動向に基づいて変えざるを得ない状況が増えている。その結果、特に開発の初期フェーズで要件の確定に時間がかかってしまう一方で、全体の開発期間は大幅な短縮が求められている。