戦後、日本の製造業は品質を重視する経営を推進し、高いグローバル競争力を実現して飛躍してきた。こうした日本の品質関連の取り組みを支えてきたのが「デミング賞」で知られる日本科学技術連盟(以下、日科技連)だ。日科技連では、全国の企業・組織が“クオリティ”に関する事例を発表する「クオリティフォーラム2017(品質経営総合大会)」(2017年11月14日~15日)を開催する。日経テクノロジーオンラインは、同フォーラムの開催に先立ち、登壇者のインタビュー記事を連載する。今回は日立製作所 IoT推進本部 担当本部長の堀水修氏のインタビューをお届けする。(聞き手は伊藤公一=ジャーナリスト)

――日立のIoTは、コスト構造改革に取り組む中で導かれたと伺いました。

堀水 修(ほりみず おさむ)
堀水 修(ほりみず おさむ)
日立製作所 IoT推進本部 担当本部長。
1988年、日立製作所入社。本社生産技術部配属。1992年、カーネギーメロン大学ロボティクスインスティテュート客員研究員。2005年、日立中国有限公司モノづくり技術センタ センタ長、2013年日立製作所Smart Transformation強化本部サブプロジェクトリーダ、2014年、モノづくり戦略本部担当本部長、2017年から現職。
(写真:栗原克己)

堀水:その通りです。心ならずも出してしまった史上最大の赤字を解消するために進めてきた経営改革の一環です。東日本大震災に見舞われた2011年ごろまでには「出血」をある程度止めることができましたが、欧米のグローバル企業との競争に打ち勝つためには、もっともっと収益力を上げねばならない。

 そこで、全ての売上原価を見直すことにしました。全グループ、全社、全コストを同じコンセプトで抜本的に洗い直す大がかりな取り組みです。

 震災直後の2011年4月にプロジェクトを立ち上げ、1年の準備期間を経て2012年から2015年までの4年間で約4300億円のコスト削減効果をうみだしました。年間1000億円の計算です。当時の売上高10兆円に対して毎年1%の原価低減を達成したことになります。 

――企業として、筋肉質の体を目指した。

堀水:日立は大所帯ですからグループ内にはさまざまな事業会社があります。しかし、それぞれが自前主義にこだわってきた結果、重複する部門や機能が方々にでき、それが壮大な無駄となって利益確保を遠ざけていた。

 例えば、震災時の調査で実装の生産ラインが国内に28箇所もあることが分かりました。さすがに持ちすぎだろうということで早速見直しに取り組み、重複の排除で稼働率を高めて原価を低減しました。

 コストのうち、製造原価の半分は購買関係です。私は生産コストの縮減を担当していたので、施設や機能の集約、IT化などを進め、2015年に当初の目標をクリアしました。では、次に何をすべきか、という議論を進める中で出てきたのがIoTです。