戦後、日本の製造業は品質を重視する経営を推進し、高いグローバル競争力を実現して飛躍してきた。こうした日本の品質関連の取り組みを支えてきたのが「デミング賞」で知られる日本科学技術連盟(以下、日科技連)だ。日科技連では、全国の企業・組織が“クオリティ”に関する事例を発表する「クオリティフォーラム2017(品質経営総合大会)」(2017年11月14日~15日)を開催する。日経テクノロジーオンラインは、同フォーラムの開催に先立ち、登壇者のインタビュー記事を連載する。今回は富士ゼロックスCS品質本部品質保証部グループ長岡本直樹氏のインタビューをお届けする。(聞き手は吉田 勝、中山 力)

 複合機/プリンタのビジネスにおける収益は、販売してからが非常に重要です。そのため品質という面では、当社では「信頼性」という捉え方をしている故障などの機械的な品質と、お客様の満足度とか使い勝手の良さといったCS(Customer Satisfaction:顧客満足度)の2つのフレームワークで考えていく必要があります。その考え方が富士ゼロックスの品質の根幹となっています。ロイヤリティーも高めていかなくてはならなので、かなりCSを意識した活動を行っています。

「コスト」として品質を定量評価

岡本 直樹(おかもと なおき)
岡本 直樹(おかもと なおき)
富士ゼロックス CS品質本部 品質保証部 デバイス品質戦略企画G長。1984年 富士ゼロックス株式会社入社。以後、設計部門、品質部門にて、信頼性試験、故障解析関係の業務に従事し、2004年より、解析技術部、基盤技術開発部、基盤技術研究所にて、高信頼性を目指し、技術開発や研究に従事し、2014年より品質保証部にて現職である全社の信頼性/品質改善推進と商品CS向上及び品質戦略業務に従事。
 2000年ごろからそうした活動に力を入れ始め、品質をコストという形で置き換えて評価するようになりました。特に、失ったコスト(ロスコスト)という視点で評価するのが我々の品質、信頼性の基本的な考え方です。

 なぜかというと、経営的には品質というのが抽象的で分かりづらい面があったからです。コストに置き換えることによって開発、生産、研究、商品開発、フィールドサービスなど異なる立場でも広く共通言語で解釈できるようになります。市場でも1番分かりやすいのはコストですし。

 故障が減れば保守・コストが減りますし、生産段階での問題が減ればロスコストが減る。開発でよく指摘される手戻りもコストで評価できます。市場品質問題で設計変更したり、評価したりするとコストがかかります。

 市場に出れば補償問題などもからんできます。それらを品質のロスコストという指標で管理しようということで、毎月それを集計しています。それによって品質の改善度合いを計ることができるようになっています。