戦後、日本の製造業は品質を重視する経営を推進し、高いグローバル競争力を実現して飛躍してきた。こうした日本の品質関連の取り組みを支えてきたのが「デミング賞」で知られる日本科学技術連盟(以下、日科技連)だ。日科技連では、全国の企業・組織が“クオリティ”に関する事例を発表する「クオリティフォーラム2017(品質経営総合大会)」(2017年11月14日~15日)を開催する。日経テクノロジーオンラインは、同フォーラムの開催に先立ち、登壇者のインタビュー記事を連載する。今回は竹中工務店取締役社長COOの宮下正裕氏のインタビューをお届けする。(聞き手は中山 力、高市 清治)
竹中工務店は1610年に創業しました。品質管理に対する考え方も、創業当時から綿々と続く宮大工の「棟梁精神」が原点です。
棟梁のものづくりは、設計施工を一貫とし、「自らが携わった仕事はどこまでも責任を持つ」という強い信念に基づいています。これが当社の品質経営の源流であり、手掛ける建築の一つひとつを「作品」と称し、「最良の作品を世に遺し、社会に貢献する」ことを経営理念としています。
一般に「作品」とは、芸術家などが自らの感性や意図を反映させて制作したものです。お客様が求めるものをお客様の考えに応じて造る建物には馴染まないと考える向きもあるでしょう。しかし当社では、お客様はもちろん設計施工を担当する当社をはじめ、協力会社、作業員ら多くのステークホルダーが関わって出来上がる、世界でたった1つのものであり、社会に遺る文化の象徴として建築を捉えています。
そんな作品を造るためにも「品質経営」は最も重要だと考えています。