品質機能展開(QFD :quality function deployment)は、開発製品に対する顧客の要求を分析し、これを設計仕様に変換することで高品質な製品を効率的に開発する優れた手法である。製品の企画段階をはじめとして新製品開発のさまざまな段階において活用できる。QFDの提唱から50年強が経過し、これまでに数多くの企業で新製品開発における品質保証を実践する方法論として注目されている。
 日本科学技術連盟でも、多くのセミナーや企業の実践事例を集めたシンポジウムが開催されている。QFDの中で、特に有名な表に品質表がある。QFDの普及段階で品質表は多くの企業で作成されてきたが、目的不在のままに表を作ることが先行されてしまったことを否定できない。いわゆる“流行りもの”に乗るだけでなく、作成した二元表を新製品開発で有効に使うために、QFDに対して再度見直しがされているという現実がある。本稿ではQFDの最近の動向を3回に分けて紹介する。

 「QFDとは何か」を簡潔に説明するのは非常に難しいのですが、筆者なりに表現すると「新製品開発における品質保証を目的とした方法論」となります。具体的には、開発に関連する情報(例えば、顧客の要求や保証すべき製品の品質特性、関連する部品や素材の品質特性、工程での管理項目など)の関連を意識しながら、整理整頓を行う方法論ともいえます。そして、QFDは整理整頓を行う際に二元表を用います。

 QFDは赤尾洋二博士、水野滋博士によって1960年代にその理論が提案されました。さらに、三菱重工業の神戸造船所が発表した品質表によって社会からの関心が高まり、多くの企業でQFDが新製品開発に適用されたと聞きます。QFDは企業での創意工夫によって進化し、近年ではQFDを基軸とした他の管理手法との融合が求められています。今回はQFDとは何かを解説することに加え、QFDの進化に関連する幾つかの転機を解説します。