戦後、日本の製造業は品質を重視する経営を推進し、高いグローバル競争力を実現して飛躍してきた。こうした日本の品質関連の取り組みを支えてきたのが「デミング賞」で知られる日本科学技術連盟(以下、日科技連)だ。日科技連では「変化に対応できる、変化を生み出せる組織能力の獲得」をテーマに、「第104回 品質管理シンポジウム」(2017年6月1~3日)を開催する。日経テクノロジーオンラインは、同シンポジウムの開催を機に、登壇者のインタビュー記事を連載する。今回は中央大学理工学部経営システム工学科教授の中條武志氏のインタビューをお届けする。(聞き手は中山 力、吉田 勝)
中條:今、企業などの組織が置かれた状況はかなり厳しいというのが実態ではないでしょうか。グローバル化が進んで顧客ニーズや人の働き方も変化するといった激しい流れに追随していくのは大変です。従来の組織そのままでいいという会社は少ないはずです。環境の変化に対応していく能力が組織にないと、生き残っていけない時代なのです。
ただ、組織を変えるといっても、言葉で言うのはやさしいですが、様々な考え方の人がいますので簡単には実現できません。組織の規模が大きくなればなるほど難しいでしょう。変えようと思ってもなかなか変わらないのが実情です。
そのような状況の中で、変化に対応する、変化を生み出せる組織能力を獲得するためのツール(方法論)に興味を持つ企業が増えています。その1つが「TQM」(Total Quality Management、総合的品質管理)です。TQMは昔からある方法論で、「顧客のニーズに応える、それを羅針盤にしてPDCA(Plan、Do、Check、Action)で組織を動かしていく」というのが基本的な考え方です。お客さんが変わったらPDCAを回して組織も変わっていくわけです。